研究課題
極低出生体重児(1500g未満児)の約50%に自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動性障害、学習障害、言語発達遅延、知的障害といった後障害を認めるが、原因となる脳の病態生理は依然として解明されていない。本研究では、脳MRI画像技術、特に最新の脳表面解析法、安静時機能的MRI技術を含め、MRI解析技術をフル活用し、極低出生体重児に認める発達障害に特有な脳構造の異常を明らかにし、発達障害の早期画像マーカーを発見することを目的とする。発達障害の早期発見、早期支援体制の構築は医療現場のみならず、家庭、教育、保健、福祉の観点から重要課題である。平成27年度も、平成26年度同様に対象症例の登録を進め、現在50例の早産児で新生児期の頭部MRI画像の撮像を終了した。得られた画像の一部は、画像解析プログラムとソフトウエアを用いて正期産児(コントロール)との違いを解析中である。また、6歳のMRIを5例で撮像し、同時に発達・知能検査も施行した。平成27年度の研究成果として、早産児脳波に観察される脳波成熟遅延所見(dysmature pattern)の重症度が拡散テンソルMR画像のび漫性白質異常やMRスペクトロスコピーにおける視床や前頭葉白質の成熟遅延と相関すること、また1歳6ヶ月児の発達指数と相関があることを明らかにした。6歳で知能評価された早産児には、明らかMRI上の構造異常は認めないが、境界域知能を示す患者が多くみられた。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、昨年度同様に6歳時のMRIを撮像し、神経学的評価と知能評価、発達障害の有無の評価を継続する計画であった。対象症例が当初の予定より減少したことを除けば、昨年に引き続き症例登録を行えており、MRIや神経心理学的評価も概ね順調に進展している。
平成28年度は、引き続き6歳時のMRIの撮像を継続すること、6歳時の神経学的評価、知能評価、発達評価を継続すること、MRIの画像解析を継続する予定である。また、発達障害の有無で2群に群分けを行い、脳構造の差異を明らかにする。また、新生児期から6歳までの画像所見の経時的変化も明らかにする。最後に研究成果を、国内・国外を問わず積極的に研究報告を行う。また、国際英文誌へ論文報告を行うとともに、本研究の重要性を社会に発信する予定である。
論文執筆に関する諸経費が予定した額より安くなったため。
次年度は最終的に研究を統括する予定である。そのため、研究費の一部は、研究発表と論文化にあてる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
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