研究課題/領域番号 |
26461550
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
瀬戸 俊之 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (60423878)
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研究分担者 |
田中 あけみ 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30145776) [辞退]
濱崎 考史 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (40619798)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ムコ多糖症 / サイトカイン / プテリジン / 自閉症 / 知的障害 / 遺伝学的未診断 / 先天代謝異常症 / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
我々は先天性ムコ多糖症の知能障害と自閉症様症状において、その病態の基礎に慢性炎症があるという仮説をたてて平成26年度から本研究を開始している。中枢神経内のサイトカインを介した炎症評価の一環として、平成27年度にはウイルス性髄膜炎におけるサイトカイン動態の解析結果を発表し、英文誌に掲載された。この論文では患者の中枢神経症状の重症度分類を考案し、サイトカイン分析結果との関連を解析した。サイトカインに基づく炎症評価と重症度との関連については、一定の相関関係を示すという結論を得た。さらに対象を広げた検討を行い検討したものについて論文を投稿中である。加えて先天性ムコ多糖症の中でもさらにまれな亜型であるムコ多糖症IIIB型患者の血清中プテリジンおよびサイトカイン解析を行なうことができた。しかしながら、平成27年度中にムコ多糖症研究の主要な研究分担者であった田中が急逝したため、一部研究の進行に影響を与えることになった。 平成28年度は対照となる先天性ムコ多糖症以外の自閉症患者の解析に重点をおき、種々の検討を行った。自閉症発症の基礎病態は多岐にわたり、その病因を詳細に検討しなければ単純に比較検討することは不可能である。そのため自閉症発症の遺伝的背景ならびに合併症等の詳細を理解した上で、サイトカインを含めた慢性炎症の評価を行うことが重要であると考えている。我々は典型的な自閉症状を呈し、かつ、遺伝学的に未診断である小児の自閉症患者について、全エクソーム解析などの手法を用いた遺伝学的診断を施行し、行動評価、てんかんなどの種々の合併症も含めた検討を行い、学会および論文発表を行った。さらに平成28年度は先天性ムコ多糖症患者の髄液採取を施行しえたので、頭蓋内の炎症評価および神経細胞障害について解析が可能となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の仮説では先天性ムコ多糖症の中枢神経症状についても炎症の関与を想定しているが、その病態の基礎にあると考えている慢性炎症の評価において各種炎症マーカーの研究が必要である。平成26年度には頭蓋内炎症性疾患の病態解明の研究成果としてウイルス性髄膜炎におけるサイトカイン動態の解析結果を発表し、平成27年度に英文誌に掲載された。先天性ムコ多糖症は世界的にみても稀少疾患ではあるが、当院にはII型を中心に、若干名のIIIB型も含めて診療中である。本研究に関しては倫理委員会への研究申請、承認を経た後に、検査入院する際などの機会を利用して本研究の意義を説明、同意を得た上で血液検体を採取しサイトカイン測定を重ねてきた。特に平成27年度はムコ多糖症の中でもさらにまれな亜型であるムコ多糖症IIIB型患者の血清中プテリジンおよびサイトカイン解析を行なうことができた。 本研究では先天性ムコ多糖症と同様に対照としてムコ多糖症以外の自閉症患者の解析が求められるが、先天性ムコ多糖症が遺伝子変異を含めた遺伝学的背景が明らかになっていることやてんかんなどの合併症に関しても詳細把握できていることに対して、自閉症発症の基礎病態は多岐にわっていること、臨床的な種々の検索が行われていないことも少なくなく不明な点が多い。自閉症患者の詳細把握ができていない状態での、先天性ムコ多糖症との比較検討は不可能である。 平成28年度は、典型的な自閉症状を呈し、かつ、遺伝学的に未診断である小児の自閉症患者について、全エクソーム解析などの手法を用いた遺伝学的診断を施行、さらにてんかんなどの合併症、行動評価なども含めて検討を行った。発表とともに現在論文化を進めている。一方で、ムコ多糖症III型を有する患者数が極めて少ないため難航していた、ムコ多糖症患者の髄液検査が施行しえた。各種解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
上述したとおり、先天性ムコ多糖症III型患者の症例数は全国的に極めて限られていること、世界的にも稀少疾患であることから、研究期間中に本研究機関において新規の対象を増やすことは困難であると判断した。そのために先天性ムコ多糖症に関しては日本国内において最も多いとされる亜型のII型も含めて検討を行っている。 一方、対照となる自閉症患者に関しては、引き続き慢性炎症の評価のみならず、生来性要因を遺伝学的な側面から明らかにしたいと考えている。我々が対象としている先天性ムコ多糖症患者についてはその遺伝学背景や合併症などの詳細が明らかになっているのに対して、自閉症患者では遺伝的な背景や合併症などの検討について不足していることが少なくない。自閉症患者の遺伝子解析や行動評価、てんかんなどの合併症も含めた中枢神経症状について、できうる限り詳細な検討を進めていきたいと計画している。これらについて、平成29年度も引き続き検討し、先天性ムコ多糖症と自閉症の比較検討という側面からも一定の結果をまとめていきたいと計画している。 さらに平成29年度は先天性ムコ多糖症患者における髄液および血液中のサイトカイン分析、神経細胞障害マーカーおよびプテリジンの解析と分析を完了する予定である。 当初の計画に含めていたiPS細胞樹立等に関する研究については平成29年度以内に完了することは困難な見通しである。本研究機関終了後も引き続き検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に研究計画の遂行が遅れが生じたため、その影響にて研究期間を1年間延長したため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度で完了予定である。
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