研究課題/領域番号 |
26461551
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
奥村 彰久 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60303624)
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研究分担者 |
早川 昌弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (40343206)
青木 茂樹 順天堂大学, 医学部, 教授 (80222470)
池野 充 順天堂大学, 医学部, 助教 (00567985)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 早産児 / 拡散カトーシス / 中枢神経発達 / fractional anisotropy / mean kurtosis |
研究実績の概要 |
2015年度は、2014年に構築した拡散カトーシス画像の撮像法を用い、愛知医科大学・順天堂大学・名古屋大学でのデータの収集を開始した。2015年度は新生児について解析を開始した。特に、早産が中枢神経発達に与える影響を脳神経画像で評価するために、早産児に対して拡散カトーシス画像を撮像した。各大学のNICUで退院前に頭部MRI画像を撮像する際に、鎮静下で拡散カトーシス画像を施行した。昨年度の方法にならって3 Tesla MRI装置を用い、32軸の傾斜磁場、3つのb値(1000、1500、2000 s/mm2)を用いた。画像の取得にかかる時間は7分30秒であった。 現在まで31例の症例で、fractional anisotropy(FA値)と mean kurtosis (MK値)を計測し、神経学的予後との関連を検討した。昨年度は用手的に関心領域を設定して解析を行ったが、カトーシス画像の解像度が一般的なMRI画像に比べて低いことや、対象である新生児の脳が成人に比べて小さいことから関心領域の設定は困難であり、より客観的で再現性が高い評価方法の検討が必要であった。そこで、TBSS(Tract-based spatial statistics)による統計的解析を行った。解析にはFMRIB Software Library v5.0を使用した。各症例のFA画像を標準脳にあてはめて線形変換を行い、同様の変換をMK画像に行い比較用の画像を作成する。それらの画像をもって各々のvoxelにおける統計的解析を行った。その結果、内包後脚および半卵円中心白質のMK値が、予後不良例では予後良好例に比べて低下していることが示唆された。一方、基底核や大脳皮質などの灰白質にはMK値の差を認めなかった。新生児においては解像度の問題が大きく、より詳細な検討を行うには方法論の再検討が必要になる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度の時点でMRI装置の撮像条件のセッティングや児の鎮静方法を含めた環境整備を行うことができ、2015年度にはその撮像プロトコルを用いて、実際に症例の拡散カトーシス画像のデータを蓄積することができた。また、31例の新生児においてTBSSを用いる客観的で再現性のある解析を行うことができたことから、解析の手法についても一定の目途を付けることができたと考える。また、TBSSによって有意な所見を得ることができ、今後の解析の手法や方向性についても、一定の方向性を定めることができた。これらの点から、2015年度の目標は概ね達成することができたと考える。現在、結節性硬化症・von Recklinghausenn病などの脳形成障害やてんかんなどの新生児以外の疾患についても各研究協力施設において症例の蓄積が進んでおり、2016年度に新たな解析を行う準備も進んでいる。この点でも現在までの達成度は、おおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在のプロトコルを用いて、新生児以外の急性脳症やてんかん性脳症などの症例を蓄積しデータベースの構築を目指す。現在までに解析可能になったfractional anisotropyおよびmean kurtosisに加え、tract-based special statisticsを取り入れるとともに、必要に応じてstatistical parametric mapなどを追加する。次世代拡散MRI解析のパラメータを従来の拡散テンソル画像のパラメータと組み合わせた解析を行う。 全脳の解析における異常部位に関連した白質路に関連し拡散テンソルtractographyでの安定した描出ができる帯状束・鉤状束・脳弓・脳梁などについて、tract specific analysis(TSA)を行う。TSAはVOLUME-ONEと我々が開発したDKI・QSIデータの解析機能をもつdTV-FZRを用いて施行し、DTIデータとDKI・QSIデータとを統合した解析を行う。個々の疾患で得られた微細構造異常の局在や白質路障害に関して、その背景となる脳障害の病態を考察するとともに、種々の疾患に共通する変化を抽出することを試みる。具体的には拡散カトーシス画像から得られるパラメータを、病理学的に既知の微細構造の変化を示す疾患や部位と比較しつつ統合的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年3月下旬にMRIの撮像を行った症例が多く、年度を跨いでデータの収集を行う必要が生じたため、一部の費用を2016年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度にMRI撮像を行った症例でデータが未解析であるものについて、差額を使用する。
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