研究課題/領域番号 |
26461552
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
日暮 憲道 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40568820)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | てんかん / iPS細胞 / 病態 / 細胞治療 / 遺伝子 / 創薬 |
研究実績の概要 |
本研究は患者iPS細胞、げっ歯類疾患モデルを利用し、ドラベ症候群の病態解明と細胞治療の実現化を目指すものである。このため、神経細胞分化誘導に関して時間と労力を要する以前の方法ではなく、より簡便かつ効率的で、in vitro解析には機能的に成熟度の高い神経細胞を、細胞治療には質と純度の高いγアミノ酪酸(GABA)作動性神経の前駆細胞を誘導する方法をそれぞれ確立する必要があり、本研究で検討中の方法(Dual SMAD抑制法がベース)をもとに、播種する細胞密度、添加するシグナル分子、シグナル阻害分子の濃度、培養期間、培地量などを調整した。現在、高効率な神経細胞への誘導が可能となり、免疫染色にてPax6やFoxG1(終脳神経細胞マーカー)、βⅢtubulinやMAP2(神経細胞マーカー)、PAN Nav(電位依存性ナトリウムチャネル)、Nav1.1(ドラベ症候群責任遺伝子SCN1Aの産物)、PSD95やSynaptophysin(シナプスマーカー)の発現を確認した。一方でNkx2.1(GABA前駆細胞マーカー)、GABAやGAD67(GABA作動性神経細胞マーカー)、Tbr1やVGlut1(グルタミン酸作動性神経細胞マーカー)の明確な発現は確認できず、さらに、神経細胞の長期成熟培養では、開始から1か月程経過した段階で生存率が顕著に低下した。また、培養1-2か月経過した神経細胞で電気生理実験を行ったところ、活動電位は誘発できたが、その発生頻度は少なかった。従って、神経の機能分化、長期培養における生存率、成熟度という点で大きな課題が残ったが、さらなる改良によって、現在はこれらの問題点を解決しつつある。これとは別に、ゲノム修飾技術を用いた患者iPS細胞の遺伝子変異修正株、正常iPS細胞への遺伝子変異導入株の樹立を進めてきたが、これらは完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
質の高い神経細胞の分化誘導方法に関する課題が残っており、研究が遅れている主要因である。ただし、この部分は信頼性の高い病態・治療研究を進める上で不可欠な部分であり、着実に進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在、培地の変更など、さらにいくつかの改良を行い、上記の神経分化誘導法の問題点は徐々に解決しつつある。今年度はこの方法を確立させ、in vitroでの効率的な病態解析方法として、カルシウムイメージングによる機能評価を進める。一方、ドラベ症候群の細胞移植研究に関し、現在いくつか他の研究グループによる予備実験の結果から、海馬への細胞移植の有効性は乏しいことが明らかとなってきている。そこで今年度は、当初予定していたピロカルピンてんかんモデルを用いるのではなく、我々が他申請研究で作成したドラベ症候群モデルラットを用いた病態解析を、当施設が保有する9.4T小動物用MRIを利用して行うこととした。これは、これまでにない新たな取り組みであり、将来的な細胞移植治療に役立つ重要なステップとなることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞分化方法が確立していないため、その先の解析費用などへの支出が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
主に細胞培養、抗体、イメージング試薬、遺伝子発現解析、動物の飼育や実験に関連する消耗品等に用いる予定である。
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