研究課題
本研究は、小児1型糖尿病児におけるmicro RNA多型の有無およびその機能を明らかにすることによって、発症予防法の確立、疾患発症機序や疾患重症化因子の解明、治療法の開発などを通して、本症を有する患者およびその家族の診療に寄与するとともに、成育医療研究の進展に貢献することを目的としている。小児1型糖尿病患児700例の中から、発症時における膵島関連自己抗体のいずれかが陽性かつ血清インスリンもしくはC-ペプチドで表されるインスリン分泌能の低下が確認できた症例187例を解析対象者とした。これらの対象者の保存DNAサンプルを用いて、候補micro RNAをターゲットとしたアンプリコンシークエンス(イルミナ社 TruSeq Custom Amplicon Project)を次世代シークエンサー(イルミナ社 Miseq)にて行った。その結果、対象とした187例の解析をそれぞれ2回施行したが、いずれの例においてもDNAからのアンプリコンシークエンスの際に形成するクラスターが不十分もしくは過剰形成となり、シークエンサーでの解析判別が不可能であった。この結果から、候補micro RNAをターゲットとしたアンプリコンシークエンスでは同サンプルでの解析は困難であり、micro RNA多型による疾患発症の機序を解明することが困難であると判断した。そして近年そのターゲットが明らかになってきているmicro RNAの生体内での発現量を明らかにすることが本症の発症機序の解明につながると考え、新たに新規発症小児1型糖尿病26例における血清micro RNAの発現量と臨床的特徴の関連について検討した。しかし発現解析を行ったいずれの対象においても、発症様式、発症年齢、性別、膵島関連自己抗体の有無、残存インスリン分泌能などの項目と候補としたmicro RNA発現量との間に有意な関連は見いだされなかった。
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