本年度及び研究期間全体を通して、SMN蛋白質の発現によるSMN2 pre-mRNA exon7スプライシング制御メカニズムを解析するために、SMN蛋白質の測定法、SMN1/SMN2mRNAを区別する方法やスプライシングアッセイ法などを駆使して研究を行ってきた。前年度までに、外来から導入したSMN蛋白質を発現させ、その細胞のトータルRNAを用いたRT-PCR法を用いてSMN2の発現レベルの解析を行っていた。本年度では、正常ヒト皮膚線維芽細胞やSMA患者由来線維芽細胞を用いて得られたPCR産物をSMN2 exon8特異的に切断する制限酵素Dde Iを用いて、SMN1/SMN2 mRNAの区別を行い、制限酵素処理されたSMN2mRNAの発現レベルを調べた。また、外来から導入しGFP-SMNを発現させた脊髄性筋萎縮症(SMA)患者由来線維芽細胞において、ウエスタンブロット法により内在のSMN蛋白質の発現が亢進することが示唆された。そこで、内在のSMN2 mRNAの発現およびexon7のスキッピングに対する影響を調べたところ、GFP-SMN蛋白質の発現する8hにおいて内在のトータルSMN2 mRNAの発現が増加することが明らかとなった。さらに、スプライシングアッセイ法として、レポーターアッセイ法の構築が遅れたので、リアルタイムqPCR法によるアッセイ法に切り換え、同実験を行ったところコントロールのGFPを発現させた細胞に比較してGFP-SMNを発現した細胞では、全長のSMN2 mRNAの発現が2.5倍上昇した。一方、exon7のスキッピングしたSMN2Δ7も1.4倍と上昇した。これらの結果から、外来からのSMN蛋白質の発現による内在SMN蛋白質の発現増加は、SMN蛋白質のSMN2mRNAの転写促進機能を有することが示唆された。
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