研究実績の概要 |
プリン受容体P2Y12Rがミクログリアのサイトカイン産生に及ぼす影響を調べるため、マウス不死化ミクログリア細胞株MG6を用いて解析を行った。P2Y12Rの特異的阻害剤PSB0739およびsiRNAによりP2Y12Rの作用を阻害し、さらにCRISPR/Cas9システムを用いてP2Y12R欠損ミクログリア細胞株を作成して、LPSおよびATP刺激に対するサイトカイン産生能を評価した。P2Y12Rの阻害によりLPS刺激に対するMG6のIL-6産生は低下し、その機序としてNF-κBのリン酸化がP2Y12R阻害により減少することが原因であることがわかった。またLPS+ATP刺激に対するMG6のIL-1β産生も低下した。ミクログリアはエクトヌクレオチダーゼであるCD39により細胞外ATPをADP, AMPに変換するが、ADPの非加水分解型アナログであるATP-βSを加えるとLPS+ATPによるIL-1β産生は著しく増加し、この作用はP2Y12R阻害によりキャンセルされたことから、ADPがP2Y12Rを介してミクログリアによるIL-1β産生を促進することが明らかとなった。ADPがP2Y12Rに作用するとミトコンドリアの膜電位が変化し、最終的にNLRP3インフラマソームの構成分子であるcaspase-1が活性化してIL-1βの成熟を促していた。さらにこのADPの作用は細胞外カリウム濃度に依存し、特定のカリウムチャネル阻害剤により著しく減弱することから、P2Y12Rが何らかのカリウムチャネルとカップリングしていることが示唆された。以上より、ミクログリアにおいて細胞外ADPはP2Y12Rを介してNF-κBならびにNLRP3インフラマソームを活性化し、IL-6およびIL-1βの産生を増強することが証明された。
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