研究課題
ダウン症候群関連急性リンパ性白血病(DS-ALL)は、高2倍体やt(12;21)などの予後良好な染色体異常の頻度が低く、予後不良であることが知られている。また、ダウン症候群の患者は抗癌剤に対する認容性が低く治療関連死の割合が高いため、分子標的治療のような毒性の低い治療が求められている。DS-ALLにおける遺伝子異常は長らく不明であったが、最近欧米のグループからDS-ALLの約20%でJAK2遺伝子の活性化変異、約60%でCRLF2遺伝子の高発現がみられることが報告された。しかし、我々の先行研究により、本邦のDS-ALLでは上記の異常の頻度はそれぞれ16%、33%であり、欧米よりも頻度が低いことが明らかになった。そこで、CRLF2-JAK経路以外の遺伝子異常を明らかにするために、本邦のDS-ALL37例の診断時骨髄を用いてRTK-RAS経路の遺伝子変異の解析を行った。RTK-RAS経路の変異は37例中16例(43%)と高頻度で認められ、その頻度は最近欧州のグループから報告された頻度(36%)とほぼ同様であった。RTK-RAS経路の変異の中で最も多かったのはFLT3の変異であり、37例中7例で認められた(19%)。欧米のDS-ALLではFLT3の変異は比較まれ(7%)であり、FLT3の変異が多いのは本邦のDS-ALLの特徴かもしれない。CRLF2-JAK経路の遺伝子変異は37例中7例(19%)で認められ、RTK-RAS経路の変異とは相互排他的であった。RTK-RAS経路の変異の有無と臨床像との関連について解析したが、変異陽性群と陰性群との間で、年齢、性別、診断時白血球数、NCIリスク分類、染色体・遺伝子異常、無イベント生存率、全生存率に違いはみられなかった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、本邦のDS-ALL37例の診断時骨髄を用いてRTK-RAS経路の遺伝子変異の解析を行った。RTK-RAS経路の変異は37例中16例(43%)と高頻度で認められ、その頻度は最近欧州のグループから報告された頻度(36%)とほぼ同様であった。RTK-RAS経路の変異の中で最も多かったのはFLT3の変異であり、37例中7例で認められた(19%)。欧米のDS-ALLではFLT3の変異は比較まれ(7%)であり、FLT3の変異が多いのは本邦のDS-ALLの特徴かもしれない。CRLF2-JAK経路の遺伝子変異は37例中7例(19%)で認められ、RTK-RAS経路の変異とは相互排他的であった。RTK-RAS経路の変異の有無と臨床像との関連について解析したが、変異陽性群と陰性群との間で、年齢、性別、診断時白血球数、NCIリスク分類、染色体・遺伝子異常、無イベント生存率、全生存率に違いはみられなかった。
本邦のDS-ALL 37例中23例(62%)でRTK-RAS経路またはCRLF2-JAK経路の遺伝子変異が認められたが、残りの14例(38%)では認められなかった。これらの症例では、RTK-RAS経路とCRLF2-JAK経路以外のシグナル伝達経路に遺伝子異常が存在する可能性がある。次年度は、これらの症例を対象にRNA-seqを行い、新規融合遺伝子の検出を試みる。また、最近DNAのメチル化の異常がDS-AMLの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになった。DS-ALLの発症にもDNAのメチル化の異常が関与している可能性があり、十分なDNA検体が残っている症例について、網羅的なDNAメチル化解析を行う予定である。
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