研究課題
小児期の血小板減少症は免疫性血小板減少症(Immune thrombocytopenia:ITP)の他に先天性血小板減少症が存在するが、本邦では包括的な小型および正常大の血小板を有する先天性血小板減少症の臨床的および遺伝学的解析は行われていない。本研究では、家族歴あり、幼少時から認められる血小板減少、ITP治療に反応が乏しい点などから先天性血小板減少症が疑われる症例を蓄積し、その臨床的および遺伝学的解析を行っている。その結果、これまでの解析症例のうち37.5%において先天性血小板減少症の確定診断ができ、WASP異常症(Wiskott-Aldrich症候群、X連鎖性血小板減少症)、RUNX1遺伝子変異を伴う急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板減少症(FPD/AML)、ANKRD26遺伝子異常を伴う常染色体優性遺伝性血小板減少症(THC2)において遺伝子変異を同定し、解析可能な症例では全例で生殖細胞系列の変異と診断した。臨床的検討では、遺伝子変異を認めない群と比較して、発症年齢はWASおよびFPD/AML群でより低年齢であること、血小板数はWAS群で低い傾向であること、出血症状はWASおよびFDP/AML群で強い傾向があることを抽出した。FPD/AMLとTHC2症例の血清トロンボポエチン(TPO)測定を行ったところ、健常コントロールと比較し全例において有意に血清TPO値は上昇し、ITPとの鑑別に有用であった。骨髄像ではRUNX1およびANKRD26遺伝子異常と巨核球形態異常の相関が明確となった。小型および正常大の血小板を有する先天性血小板減少症において、不要なITPの治療を避けられること、また血液悪性疾患合併の可能性のあるFPD/AMLやTHC2を注意深く経過観察できることから、その確定診断法の確立は有用であると考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では、家族歴あり、幼少時から認められる血小板減少、ITP治療に反応が乏しい点などから先天性血小板減少症が疑われる症例を蓄積し、その臨床的および遺伝学的解析を行っているが、これまで約30症例の解析を終了しており、症例数の蓄積と解析は計画以上に進展できた。その結果、これまで37.5%において先天性血小板減少症の確定診断ができ、臨床的な特徴やバイオマーカーの検討を行うことができた。小型および正常大の血小板を有する先天性血小板減少症において、不要なITPの治療を避けられること、また血液悪性疾患合併の可能性のあるFPD/AMLやTHC2を注意深く経過観察を行うことが可能である。既知遺伝子変異の遺伝子診断系の確立、バイオマーカーを含めた確定診断法の確立は臨床への還元として有用であった。
今後は、既知遺伝子変異解析症例のまとめを英文論文として作成し、論文投稿を行い、受理のための必要な方策を行う。解析症例の約60%においては既知遺伝子は正常であり、当初の本研究計画に従って、アレイCGH法とエクソーム解析を行い、新規原因遺伝子の検索を行う。その後に新規原因遺伝子候補が発見された場合には未解決な分子病態の解析を行う。
物品費の使用は概ね予定通り使用したが、旅費は他の研究資金から充当することができ、当該助成金からの旅費使用がなかったため。
次年度の物品費としてエクソーム解析などの費用の増加が見込まれるため、これに使用する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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