研究実績の概要 |
1.当初GSTプルダウンアッセイ法によるPLCβ3C末領域内におけるLyn結合部位が同定されたと考えられたが、その後の実験で再現性が取れなかった。本実験での結果は、過去の報告と整合すると(Xiao W, Yasudo H, Kawakami T et al. Immunity 2011)生理下の条件では、PLCβ3C末領域とlynとの結合は極めて弱いため、再現性が取れないと思われた。 2.1の理由より、TATププチドを用いた実験では、TAT-PLCβ3C末領域内を用いる代わりに、TAT配列を付加したSHP-1およびそのkinase inactive SHP-1(SHP-1-C453S;以下SHP-1 CS mutant, SHP-1-D419A;以下SHP-1 DA mutant)を用いることとした。該当するTATペプチドをニッケルカラム法により精製した。 3.上記TAT-SHP-1,TSHP-1 CS mutantおよびSHP-1 DA mutantを用いてBaF-3細胞(マウスpro-B細胞株)MEC-1細胞,MEC-2細胞(Bリンパ球慢性リンパ球性白血病由来)に導入したところ、TAT-SHP-1,TAT-kinase inactive SHP-1とも細胞増殖抑制効果があった。特にTAT-SHP-1WT、TAT-SHP-1CS mutantの導入では細胞抑制が著明であった。 また、喘息モデルマウスでも、TAT-SHP-1,TAT-kinase inactive SHP-1を事前投与したマウスでは、気管支肺胞液内の好酸球、好中球の減少が認められた。TAT-SHP-1WT、TAT-SHP-1CS mutantの導入では細胞抑制が著明であった。 このことから、SHP-1をターゲットとしたTAT治療法が喘息の治療に効果がある可能性が示唆された。
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