横紋筋肉腫は病理組織学的に大きく胎児型と胞巣型の2つに分けられるが、いずれの病型も初診時遠隔転移陽性の場合、5年生存率30%未満と極めて予後不良である。一方小児腫瘍では腫瘍発生のメカニズムとして、転座が関与する頻度が高いとされている。腫瘍特異性も高いことから、診断的価値や治療標的として解析する意義は大きい。横紋筋肉腫では胞巣型の約20%と胎児型においては、現在重複する転座は報告されていない。そこで転座陰性胞巣型と胎児型横紋筋肉腫における新規転座の探索を行った。方法としては次世代シーケンサーを用いてRNAシークエンスを行うことで網羅的な解析を行った。解析検体は東大小児科で保存されている腫瘍検体に加え、他施設からの収集も行った。本解析には高純度のRNAが必要であり、切り出された新鮮腫瘍または凍結検体を用いるが、長期保存検体やRNAとして保存された検体は純度に問題が多く、基準を満たしたのは胎児型5例、胞巣型3例の8検体だった。胞巣型2例はpositive controlとしてPAX3-FOXO1の転座陽性検体で、転座陰性の胞巣型は1検体となった。RNAシークエンスで22の融合遺伝子が検出され、うちインフレームで融合していたものは3つだった。reverse transcription PCRでは、インフレームのものは2/3、インフレームでないものは10/19で再現性が確認できた。インフレームで確認可能だったのは既知のPAX3-FOXO1のみで、最終的に新規の融合遺伝子は検出されなかった。インフレームでないものの臨床的意義は不明だが、そのうちのNSD-ZNF346については胎児型横紋筋肉腫で検出されたとの報告があった。
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