研究課題
原発性免疫不全症に対する造血細胞移植後における混合キメリズムの遷延は、晩期拒絶や免疫グロブリン産生の回復不十分との関連性が指摘されているものの、詳細な実態は明らかとなっていない。本研究では、遷延する混合キメリズムが患者の免疫機構に与える影響を調べ、長期的な予後の診断に役立てることを目的とする。東京医科歯科大学小児科にて2012年から2014年の間にFludarabineとBusulfanによる前処置を用いた造血幹細胞移植が施行された原発性免疫不全患症者11例では、8例で生着が認められ、このうち7例は完全キメラであった。一方、3例では移植後30日前後に生着不全が起こり、このうち2例は再移植により生着が得られ、混合キメラとなったのは1例であった。また平成26年度は予備検討で得られたデータを基に解析方法について検討し、下記の解析法の確立を行った。1) 移植前の患者における母親由来細胞の検出と細胞種の同定。2) 末梢血のキメリズム解析:T細胞、B細胞、NK細胞、単球、樹状細胞におけるキメリズム解析。3) 骨髄のキメリズム解析:造血幹細胞分画(CD34+CD38-)、造血前駆細胞分画(CD34+CD38+)およびその亜分画(CMP, GMP, MEP)におけるキメリズム解析。4) ドナーおよびレシピエント由来骨髄系細胞の分化度。5) T細胞の解析:ドナーおよびレシピエント由来T細胞のnaive/memory解析、制御性T細胞(Treg)の検出、PD-1の発現。6) B細胞の解析:ドナーおよびレシピエント由来B細胞の分化段階の比較。7) 骨髄中の造血前駆細胞亜分画のコロニーアッセイ:ドナーおよびレシピエント由来造血前駆細胞における増殖・分化能の比較。各免疫細胞の分化段階と機能について、由来の異なる細胞群に分けて詳細に行うことで、移植後のキメリズム病態の解明が進むものと考えられた。今後は移植後キメリズムとB細胞の成熟度、及び患者の抗体産生能の回復との関係を中心に明らかにする予定である。
2: おおむね順調に進展している
原発性免疫不全症候群研究調査班である東京医科歯科大学では移植後の症例解析が進んでいる。一方、近年本疾患においてはHLAを一致させた造血細胞移植が多いことより、HLA-Flow法の解析対象となる症例が少ないという課題が生じている。
HLA-Flow法を用いたキメリズム解析には、ドナーおよびレシピエントに特異的なHLAをマーカーとするため、移植の際にミスマッチHLAが存在し、かつそのHLAに対する抗体が入手可能であることが条件である。これに適されない症例を解析する場合は、免疫細胞の各分画をフローサイトメーターでソーティングし、XY-FISH法やSTR-PCR法等でキメリズム解析を行う。また重症複合免疫不全症を含めた原発性免疫不全症候群を対象とする。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件)
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