重症複合免疫不全症に対する造血幹細胞移植後キメリズム病態の解明

2015 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26461567
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 渡辺 恵理 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (10624819)
• 研究分担者: 渡辺 信和 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), 細胞治療科, 医長 (10334278) ; 今井 耕輔 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90332626)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: 原発性免疫不全症 / 造血細胞移植 / キメリズム解析 / 免疫再構築 / B細胞 / フローサイトメトリー / HLA / HLA-Flow

研究実績の概要

1) IgGを認めた移植前のX-SCIDにおいて、HLA-Flow法により母子間のキメリズム解析を行った。その結果、母親由来T細胞が検出され、またリンパ球の約10%存在したCD19+B細胞のうち約5%が母親由来であった。この母親由来B細胞はClass-switched memory (CD10-CD19+CD20+CD27+IgD-) 限定的に生着していた一方で、SCID由来B細胞はほとんどがナイーブ・フェノタイプ (CD10-CD19+CD20+CD27-IgD+) であり、抗体産生に母親由来細胞の関与が疑われた。
2) 移植後のX-SCIDにおいて、ドナーとレシピエントにそれぞれ由来するB細胞の成熟度の違いを解析した結果、ドナー由来B細胞にはメモリー細胞が存在する一方で、レシピエント由来B細胞ではナイーブ・フェノタイプが大部分を占めていることが分かった。共通γ鎖に変異が生じているレシピエント由来B細胞は、IL-21等のサイトカインのシグナルを受けることができず、移植後も分化障害が回復しないことが推測された。
3) CD40L欠損症に対する臍帯血移植後、徐々にドナー由来リンパ球の頻度が増加した症例の末梢血において、レシピエント由来T細胞ではCD4+細胞優位、ドナー由来T細胞ではCD8+細胞優位であった。また、ドナー由来T細胞ではTregフェノタイプ (CD25hiCD127lo) の頻度が高く、レシピエント由来T細胞はほとんどがナイーブ・フェノタイプ (CCR7+CD45RA+) のままであったのに対し、ドナー由来T細胞ではエフェクターメモリー (CCR7-CD45RA-) が多くを占め、両者は異なる挙動を示した。
免疫細胞の挙動を由来に分けて詳細に解析することにより、複雑な移植後キメリズム病態の把握が進み、予後の予測やより良い治療法の開発に繋がることが期待される。

研究成果

• [雑誌論文] Haploidentical Bone Marrow Transplantation With Clofarabine and Busulfan Conditioning for a Child With Multiple Recurrent Acute Lymphoblastic Leukemia. (2016)
  • 著者名/発表者名: Aoki Y, Miyawaki R, Imai K, et al.
  • 雑誌名: J Pediatr Hematol Oncol. 巻: 38(1) ページ: e39-41
  • DOI: 10.1097/MPH.0000000000000454.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Successful Myeloablative Bone Marrow Transplantation in an Infant With Wiskott-Aldrich Syndrome and Bacillus Calmette-Guerin Infection. (2015)
  • 著者名/発表者名: Yasutomi M, Yoshioka K, Mibayashi A, Tanizawa A, Imai K,et al.
  • 雑誌名: Pediatr Blood Cancer. 巻: 62(11) ページ: 2052-2053
  • DOI: 10.1002/pbc.25588.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Novel compound heterozygous DNA ligase IV mutations in an adolescent with a slowly-progressing radiosensitive-severe combined immunodeficiency. (2015)
  • 著者名/発表者名: Tamura S, Higuchi K, Tamaki M, Inoue C, Awazawa R, Mitsuki N, Nakazawa Y, Mishima H, Takahashi K, Kondo O, Imai K, et al.
  • 雑誌名: Clin Immunol. 巻: 160(2) ページ: 255-60
  • DOI: 10.1016/j.clim.2015.07.004.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Clinical features and hematopoietic stem cell transplantations for CD40 ligand deficiency in Japan (2015)
  • 著者名/発表者名: Mitsui-Sekinaka K, Imai K, et al.
  • 雑誌名: J Allergy Clin Immunol. 巻: 136(4) ページ: 1018-24
  • DOI: 10.1016/j.jaci.2015.02.020.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation for Chediak-Higashi syndrome. (2015)
  • 著者名/発表者名: Umeda K, Adachi S, Horikoshi Y, Imai K, et al.
  • 雑誌名: Pediatr Transplant. 巻: Oct 29 ページ: 1-5
  • DOI: 10.1111/petr.12626.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Multicenter experience in hematopoietic stem cell transplantation for serious complications of common variable immunodeficiency. (2015)
  • 著者名/発表者名: Wehr C, Gennery A, Lindemans C, Schulz A, Hoenig M, Marks R, Recher M, Gruhn B, Holbro A, Heijnen I, Meyer D, Grigoleit G, Einsele H, Baumann U, Witte T, Sykora KW, Goldacker S, Regairaz L, Aksoylar S, Ardeniz Ö, Zecca M, Zdziarski P, Meyts I, Matthes-Martin S, Imai K, et al.
  • 雑誌名: J Allergy Clin Immunol. 巻: 135(4) ページ: 988-97
  • DOI: 10.1016/j.jaci.2014.11.029.
  • 査読あり
• [雑誌論文] RAG1 deficiency may present clinically as selective IgA deficiency. (2015)
  • 著者名/発表者名: Kato T1, Crestani E, Kamae C, Honma K, Yokosuka T, Ikegawa T, Nishida N, Kanegane H, Wada T, Yachie A, Ohara O, Morio T, Notarangelo LD, Imai K, et al.
  • 雑誌名: J Clin Immunol. 巻: 35(3) ページ: 280-8
  • DOI: 10.1007/s10875-015-0146-4.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Hematopoietic Stem Cell Transplantation for X-Linked Thrombocytopenia With Mutations in the WAS gene. (2015)
  • 著者名/発表者名: Oshima K, Imai K, et al.
  • 雑誌名: J Clin Immunol. 巻: 35 (1) ページ: 15-21
  • 査読あり
• [学会発表] 炎症性腸疾患を合併したXIAP 欠損症患者に対する骨髄移植成功例 (2015)
  • 著者名/発表者名: 小野真太郎、金兼弘和、我有茉希、久保田真理、足洗美穂、宮本智史、小林千佳、満生紀子、今井耕輔、高木正稔、梶原道子、森尾友宏
  • 学会等名: 第57回日本小児血液・がん学会学術集会
  • 発表場所: 甲府富士屋ホテル (甲府市)
  • 年月日: 2015-11-29
• [学会発表] Unrelated allogenic bone marrow transplantation for dyskeratosis congenita: two case reports. (2015)
  • 著者名/発表者名: 宮本智史、大川哲平、満生紀子、磯田健志、青木由貴、高木正稔、梶原道子、今井耕輔、金兼弘和、長澤正之、森尾友宏
  • 学会等名: 第77回日本血液学会学術集会
  • 発表場所: ANAクラウンプラザホテル金沢 (金沢市)
  • 年月日: 2015-10-17
• [学会発表] XIAP欠損症に伴う炎症性腸疾患 (2015)
  • 著者名/発表者名: 岡野翼、金兼弘和、小野真太郎、足洗美穂、小林千佳、星野顕宏、満生紀子、青木由貴、高木正稔、今井耕輔、森尾友宏
  • 学会等名: 第25回日本小児リウマチ学会総会・学術集会
  • 発表場所: 金沢歌劇座 (金沢市)
  • 年月日: 2015-10-10
• [学会発表] 肝脾腫・高IｇG血症を呈した9ヶ月男児 (2015)
  • 著者名/発表者名: 岡野翼、渡辺恵理、西川拓郎、友田昴宏、久保田真理、宮本智史、高島健浩、満生紀子、高木正稔、今井耕輔、金兼弘和、河野嘉文、森尾友宏
  • 学会等名: 第6回関東甲越免疫不全症研究会
  • 発表場所: ステーションコンファレンス東京 (東京都千代田区)
  • 年月日: 2015-09-27
• [学会発表] IKBA遺伝子異常による無汗性外胚葉形成不全症の一例 (2015)
  • 著者名/発表者名: 西田豊、鎌田亜希子、石毛崇、八木久子、滝沢琢己、荒川浩一、河合朋樹、今井耕輔、河合利尚
  • 学会等名: 第6回関東甲越免疫不全症研究会
  • 発表場所: ステーションコンファレンス東京 (東京都千代田区)
  • 年月日: 2015-09-27
• [学会発表] 原発性免疫不全症に対する Fludarabine + Busulfan を前処置とした造血幹細胞移植の成績と問題点 (2015)
  • 著者名/発表者名: 今井耕輔
  • 学会等名: 第1回造血細胞移植合同班会議
  • 発表場所: 名古屋第一赤十字病院 (名古屋市中村区)
  • 年月日: 2015-07-04
• [学会発表] X-linked thrombocytopenia に対して造血幹細胞移植を施行した症例についての国際調査 (2015)
  • 著者名/発表者名: 今井耕輔
  • 学会等名: 第1回造血細胞移植合同班会議
  • 発表場所: 名古屋第一赤十字病院 (名古屋市中村区)
  • 年月日: 2015-07-04
• [学会発表] CD40LG 異常によるX連鎖高IgM症候群に対する造血細胞移植療法についての後方視的検討 (2015)
  • 著者名/発表者名: 今井耕輔
  • 学会等名: 第1回造血細胞移植合同班会議
  • 発表場所: 名古屋第一赤十字病院 (名古屋市中村区)
  • 年月日: 2015-07-04
• [学会発表] 毛細血管拡張性運動失調症の児に発症したサイトメガロウイルス脳炎 (2015)
  • 著者名/発表者名: 小林千佳、松本和明、青木由貴、高木正稔、今井耕輔、梶原道子、森尾友宏
  • 学会等名: 第118回日本小児科学学会学術集会
  • 発表場所: 大阪国際会議場 (大阪市北区)
  • 年月日: 2015-04-19
• [学会発表] 再生不良性貧血移植後の汎血球減少において認めたCD177(HNA-2)に対する抗好中球抗体 (2015)
  • 著者名/発表者名: 岡本浩之、和田泰三、村岡正裕、榊原康久、東馬智子、宮本智史、富澤大輔、今井耕輔、森尾友宏、谷内江昭宏
  • 学会等名: 第118回日本小児科学学会学術集会
  • 発表場所: 大阪国際会議場 (大阪市北区)
  • 年月日: 2015-04-19