研究課題/領域番号 |
26461569
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
齋藤 昭彦 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30531389)
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研究分担者 |
渡邉 香奈子 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80626094)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 移行抗体 / ヒトパレコウイルス / 臍帯血 / 新生児 / 早期乳児 |
研究実績の概要 |
ヒトパレコウイルス3型感染症(Human Parechovirus type 3, HPeV3)は、新生児、早期乳児にのみ重症感染症をきたすが、その原因は分かっていない。我々は、母体からの移行抗体が重要な役割を果たすと仮説を立て、その検証を行った。 具体的には、①2013年-2014年に新潟県内の医療機関で出生した正期産児の臍帯血175検体(母体年齢:中央値32歳、範囲16歳-44歳)、②2013年-2014年に新潟県内の医療機関に入院し、血清、髄液を用いたPCR法によって重症ヒトパレコウイルス3型感染症(Human Parechovirus type 3, HPeV3)感染症と診断された新生児、早期乳児45症例(年齢:中央値1か月、範囲4生日-3か月21日)について、HPeVsに対する中和抗体価を測定した。 その結果、臍帯血におけるHPeV1, 3, 6に対する中和抗体の幾何平均抗体価の間には有意な差はなかった(P=0.15)。しかしながら、HPeV3感染児の中和抗体価をみると、発症時は93%(42/45)が中和抗体をもっておらず、残りの7%(3/45)も低値(1:16以下)であった。そして、生後3か月、6か月の時点でのHPeV3に対する抗体価は、全例で1:512以上で、中和抗体価が上昇しており、母親からの移行抗体が、新生児・早期乳児の重症HPeV3感染症において重要な役割を果たすことが示唆された。発症時の中和抗体価の最大値が1:16であったため、1:32をカットオフに設定すると、臍帯血における中和抗体保有率はHPeV1 65%、HPeV3 61%、HPeV6 71%であり、有意な差はなかった(P=0.12)。 以上より、約40%の新生児がHPeV3に対する移行抗体を保有しておらず、重症HPeV3感染症のハイリスクグループであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた正期産児の臍帯血の検体測定は既に終了した。また、2013年-2014年にヒトパレコウイルス3型感染症の流行が新潟県内であり、45の症例登録を行い、順調に検体採取と検体の測定を行うことが出来た。本結果は、2014年の米国感染症学会で発表され、現在、国際誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
継続して、HPeV3感染児の移行抗体を経時的に測定し、抗体価の高値が継続するかを検討する。 また、ヒトパレコウイルスの近隣のエンテロウイルスにおいては、新生児、早期乳児において重症感染症を引き起こすことが知られている。その治療として、中和抗体を補充する目的で、ヒト免疫グロブリン製剤の投与が有効な治療として知られている。 ヒトパレコウイルス3型感染症においても、母体からの移行抗体が欠如、ないしは不足していることが今回の検討で明確になったので、今後は、ヒト免疫グロブリン製剤中の中和抗体の測定、更には、in vitroにおけるヒト免疫グロブリン製剤の抗ウイルス作用などを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が予定よりも早く遂行でき、必要と思われた物品の購入が必要なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
計画しているヒト免疫グロブリン製剤の購入、抗体価の測定に用いる。
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