研究実績の概要 |
ヒトパレコウイルス3型(Human parechovirus type 3, HPeV3)は、新生児や早期乳児に敗血症や脳髄膜炎などの重症感染症をきたし、近年、小児感染症領域の新興感染症として非常に注目されている感染症である。 本研究では、HPeV3に対する特異的抗体がその発生機序に重要な役割を果たしているという仮説の基、1)正期産で生まれた児の臍帯血の抗HPeV3抗体と2)実際にHPeV3に感染した新生児、早期乳児の抗HPeV3抗体を経時的に測定した。その結果、約40%の臍帯血で、抗HPeV3抗体が低値、または陰性であった。一方で、感染した児は、発症時には、抗HPeV3抗体が低値であったにもかかわらず、発症3か月と6か月時には、その値が高値で持続していることが分かった。また、その後の追跡調査(1歳時)でも、その値は高値を維持していることが分かった。 一方で、HPeV3に対する特異的治療は存在しない。我々は、国内で市販されているヒト免疫グロブリン製剤の抗HPeV3抗体を測定したところ、全ての製剤で高い抗体価を示していた。すなわち、患者への適切なタイミングと投与量を検討すれば、ヒト免疫グロブリン製剤は、HPeV3感染児の治療に使用できる可能性が示唆された。 以上より、本研究では、我々の仮説が正しいことが証明され、HPeV3に対する特異的抗体が、HPeV3感染の発生機序に重要な役割を果たし、その臨床応用への可能性が明確となった。
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