研究課題
1)ダブルネガティブT細胞の増加を伴うALPS類縁疾患患者を対象として全エキソーム解析を行い、NRASの体細胞変異を同定し、RAS関連ALPS様疾患であると診断した(J Clin Immunol 2015; 35: 454-8)。2)女児例を含む血球貪食性リンパ組織球症の1家系を対象に全エキソーム解析を行い、XIAP変異を同定した。X染色体の異常な不活化による女性XIAP欠損症であることを証明した(J Clin Immunol 2015; 35: 244-8)。3)原因不明の複合免疫不全症の患者さんを対象に全エキソーム解析を行い、X連鎖複合免疫不全症(SCID)の原因遺伝子であるIL2RG変異を同定した。患者では体細胞モザイクを有しており、そのことがSCIDと異なり、乳児期以降の発症と関係していたものと考えられた(J Clin Immunol 2015; 35: 610-4)。4)X連鎖劣性遺伝形式を有する低ガンマグロブリン血症の1家系を対象に全エキソーム解析を行い、SH2D1A変異を同定し、XLP1(SAP欠損症)と診断した。フローサイトメトリーでメモリーT細胞の一部にSAP陽性細胞を認め、体細胞モザイク例であった。さらにSAP陽性細胞が機能的に正常であることを証明し、臨床症状の軽症化に関わっていると考えられた(投稿中)。5)致死的EBウイルス関連リンパ増殖症を呈した女児例を対象に全エキソーム解析を行い、ZAP70変異を同定した(投稿中)。ZAP70欠損症は通常SCIDを発症するが、今回同定した変異は部分的機能低下型の変異であることを証明した(投稿中)。
2: おおむね順調に進展している
従来のフローサイトメトリーならびにサンガー法による遺伝子解析では原因遺伝子の同定が困難であった非典型的リンパ増殖症を対象に全エキソーム解析を行い、複数の患者で原因遺伝子を同定することができた。非典型的な臨床像が体細胞モザイクやX染色体の異常な不活化と関係していることを明らかにした。特に部分的機能低下型ZAP変異の報告はこれまでになく、ZAP70欠損症の疾患概念ならびにEBV関連リンパ増殖症の疾患概念の広がりに貢献する貴重な発見であった。全エキソーム解析による診断が極めて有用であるとともに、その後の機能解析が需要であることが示され、概ね研究成果は予定通り達成されていると考えられる。
今後も原因不明の遺伝性リンパ増殖症候群、特にEBV関連リンパ増殖症の患者を対象に全エキソーム解析を行い、新奇遺伝子変異の同定も行う方針である。またEBV関連リンパ増殖症は予後不良であり、迅速な診断も望まれるので、次世代シークエンサーを利用した候補遺伝子のターゲットシークエンスを開発予定である。さらにメモリーT細胞にSH2D1A体細胞モザイクを有したXLP1患者さんからiPS細胞の樹立を行う予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
J Clin Immunol
巻: 35 ページ: 610-614
10.1007/s10875-015-0202-0
J Investig Allergol Clin Immunol
巻: 25 ページ: 205-213
Inflamm Bowel Dis
巻: 21 ページ: 1529-1540
10.1097/MIB.0000000000000397
巻: 35 ページ: 454-458
10.1007/s10875-015-0163-3
巻: 35 ページ: 244-248
10.1007/s10875-015-0144-6