研究課題
FLT3/ITD遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病(AML)の予後はきわめて不良である。現在、FLT3チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の開発が進められているが、TKIはFLT3/ITD陽性AMLの予後を大きくは改善しないことが複数の臨床試験から明らかとなっている。その理由として、TKI治療中にFLT3/ITD変異AML細胞が様々な薬剤耐性機序を獲得することが指摘されている。本研究では、FLT3/ITD遺伝子変異を含む難治性AMLに対する薬剤耐性機序に屈しない新規治療法の開発を目的に、AML細胞に高発現するサイトカイン受容体を標的とした新規キメラ抗原受容体(CAR)の開発を試みた。まず、AML細胞株および抗FLT3抗体を購入し、AML細胞株上におけるFLT3の発現をフローサイトメトリー法で確認し、本実験の標的に用いるAML細胞株を複数決定した。続いて、FLT3発現AML細胞が高発現しているサイトカイン受容体Xに対するキメラ抗原受容体(X.CAR)を、CD19特異的CARを鋳型として新規に作製した。上記X.CARを健常ボランティアドナーから採取したT細胞にトランスポゾン遺伝子改変法を用いて遺伝子導入し、その遺伝子改変X.CAR-T細胞を我々が開発した動物材料・ウイルス・腫瘍細胞株・血清フリーのT細胞培養法(Shoji S, et al. Cytotherapy 2014)を用いて大量増幅した。FLT3発現AMLに対するX. CAR発現T細胞の抗白血病効果を評価するために、X. CAR発現T細胞とAML細胞株を1:5の比で共培養した。その結果、X. CAR発現T細胞がAML株4株中3株に対してほぼ100%の抗白血病効果を示すことが明らかとなった。
3: やや遅れている
1)急性骨髄性白血病を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)トランスポゾンベクターの作製に成功した。2)トランスポゾン法によるCAR遺伝子の導入方法およびCAR-T細胞の大量培養方法を確立し、論文発表した。3)現在、in vitro実験系を用いたCAR-T細胞の抗白血病効果の評価を行っている。
平成27年度は、昨年度に引き続きin vitro実験系を用いたCAR-T細胞の抗白血病効果の評価を行い、概ねの実験が終わった段階で当初から予定していたヒトAMLモデルマウスを用いたin vitro実験に移行する。
平成26年度に計画していたCAR-T細胞の抗白血病効果を評価するin vitro実験の一部がH26年度内に実施できなかったため、試薬代の一部が次年度に持ち越された。
延期した実験に必要な試薬を平成27年度に使用する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Cytotherapy
巻: 16 ページ: 1257-1269
10.1016/j.jcyt.2014.05.022.