研究実績の概要 |
FLT3/ITD遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病(AML)の予後はきわめて不良である。現在、FLT3チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の開発が進められているが、TKIはFLT3/ITD陽性AMLの予後を大きくは改善しないことが複数の臨床試験から明らかとなっている。その理由として、TKI治療中にFLT3/ITD変異AML細胞が様々な薬剤耐性遺伝子変異を獲得することが明らかとなっている。これまでにキメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、TKI耐性遺伝子変異を獲得後した白血病細胞に対しても、獲得前の白血病細胞株に対するのと同等以上に抗白血病効果を発揮できることを、急性リンパ性白血病株を用いて明らかにしてきた(Saito S, Nakazawa Y, et al. Cytotherapy, 2014)。 本研究では、FLT3/ITD遺伝子変異を含む難治性AMLに対する薬剤耐性機序に屈しない新規治療法の開発を目的に、AML細胞に高発現するサイトカイン受容体を標的とした新規キメラ抗原受容体(CAR)を開発した。 FLT3/ITD遺伝子変異を有するAML細胞株MV4-11は、細胞表面上にGM-CSF受容体(GMR)を発現することFLT3と同時に、GM-CSF受容体(GMR)を発現する。そこで、GM-CSF受容体(GMR)と特異的に結合するCARを作製した(Nakazawa Y, et al. J Hematol Oncol 2016)。 続いて、独自に開発したT細胞培養法piggyBacトランスポゾン遺伝子改変法および動物材料・血清フリーのT細胞培養法を用いて、GMR CAR-T細胞を大量増幅した(Saito S, Nakazawa Y, et al. Cytotherapy, 2014; Nakazawa Y, et l. J Hematol Oncol 2016)。 FLT3発現AMLに対するGMR CAR-T細胞の抗白血病効果を評価するために、GMR CAR-T細胞とMV4-11を1:2の比で共培養したところ、GMR CAR-T細胞はMV4-11の増殖を著しく抑制することが明らかとなった。
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