研究実績の概要 |
平成26年度までに野生型高親和性IgE受容体β鎖およびアスパラギン酸をアラニンに置換した高親和性IgE受容体β鎖変異体(D234A)のタンパク質を精製し、二次、三次構造および熱安定性を明らかにし、野生型β鎖と有意差がないことは確認できている。このデータによってβ鎖D234に何らかのタンパク質が会合し、マスト細胞のシグナル伝達が行われるという仮説は正しいと判断し、平成27年度はD234に会合する分子の候補を既存のデータベース等を用いて予測し、検討した。いくつかの候補となりうる分子が得られたので、それらのタンパク質の精製にとりかかった。精製に成功したものに関しては、平成28年度に質量分析法や光散乱法などいくつかの方法を用いて、β鎖タンパク質との会合実験を行う予定である。 また、D234の近傍には、すでにβ鎖の機能に重要な役割をはたすITAM (immunoreceptor tyrosine-based activation motif)や遺伝子多型(L172I, L174V, E228G)が存在する。D234に対する影響を検討するため、これらの二次、三次構造および熱安定性も併せて検討した。ITAMのチロシンをフェニルアラニンに置換したβ鎖変異体や、遺伝子多型(L172I, L174V, E228G)では野生型β鎖に比べてその二次、三次構造に有意差は認められなかったが、E228Gのみは野生型に比べて熱安定性の低下が見られた。これらの知見もβ鎖の構造や機能を検討するうえで、重要であると考えられる。
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