研究課題/領域番号 |
26461580
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 義行 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40432273)
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研究分担者 |
小島 勢二 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20313992)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小児血液学 / 造血幹細胞移植 / EBウイルス / CTL |
研究実績の概要 |
1)造血幹細胞移植後にEBV再活性化およびウイルス特異的CTL体内動態の観察:90例以上の移植後患者末梢血液中EBV-DNA定量を行い、ATG血中濃度をELISA法により測定し、EBV再活性化との関連を検討した。またEBV再活性の新規症例においては、Rituxan投与前後にフローサイトメトリー法による末梢血中のリンパ球サブセットの解析を行い、CD20陰性CD19陽性細胞の有無を同定した。Rituxan投与後にEBV-DNA増加症例においては、EBERに対するプローブを用いたフローサイトメトリーFISH法を用いてEBV感染細胞の同定、EBV特異的CTLテトマラー染色によりEBV特異的CTLのモニタリングが可能となった。 2)EBV特異的CTL存在下で発症するEB-LPDにおけるエスケープメカニズムの検討:造血幹細胞移植後に体内にEBV特異的CTLが存在しながら免疫抑制剤を中止してもEB-LPDが縮小しない症例を経験し、LMP2,EBNA3A,EBNA3BといったEBV抗原発現について発現が消失していることを確認した。(亀井、高橋ら、日本血液学会東海地方会、名古屋、2015年5月23日報告した) 3)HLA-A0201/0206,A2402以外のHLA拘束性EBV抗原ペプチドによる対象HLAの拡大:現在当院で行っている「同種造血幹細胞移植後において生じるEBV関連リンパ球増殖症に対するEBV抗原特異的CTLを用いた治療の安全性に関する臨床第I相試験」で用いられているEBV抗原ペプチドはHLA-A0201/0206,A2402拘束性であるが、HLA-A11拘束性ペプチドを合成し、新たにEBV特異的CTLとして培養可能であった。 4)第3者由来末梢血からEBV特異的CTLを培養し、凍結保存しておき、移植後リツキシマブ抵抗性EB-LPDに投与する第I相試験が再生医療新法に基づいて承認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当院では小児に対する造血細胞移植施設として、年間移植数が全国で最も多く、抗胸腺グロブリンを用いたHLAハプロ一致移植といった移植後EBV再活性化リスクの高い移植も多く行っており、順調に研究に必要な検体が確保できている。さらに第3者由来EBウイルス特異的CTL療法の第I相試験が再生医療新法に基づき承認され、開始できた。 1)造血幹細胞移植後にEBV再活性化およびウイルス特異的CTL体内動態の観察:移植後患者末梢血液中EBV-DNA定量を行い、ATG血中濃度をELISA法により測定し、EBV再活性化との関連を検討した。末梢血中のリンパ球サブセットの解析によるCD20陰性CD19陽性細胞の同定、EBERに対するプローブを用いたフローサイトメトリーFISH法を用いたEBV感染細胞の同定、EBV特異的CTLテトマラー染色により患者体内のEBV特異的CTLのモニタリング可能。 2)EBV特異的CTL存在下で発症するEB-LPDにおけるエスケープメカニズムの検討:造血幹細胞移植後に体内にEBV特異的CTLが存在しながら免疫抑制剤を中止してもEB-LPDが縮小しない症例を経験し、LMP2,EBNA3A,EBNA3BといったEBV抗原発現について発現が消失していることを確認した(亀井、高橋ら、日本血液学会東海地方会、名古屋、2015年5月23日報告した)。 3)HLA-A0201/0206,A2402以外のHLA拘束性EBV抗原ペプチドによる対象HLAの拡大:「同種造血幹細胞移植後にEBV抗原特異的CTLを用いた治療の安全性に関する臨床第I相試験」において新規HLA-A11拘束性ペプチドを合成し、新たにEBV特異的CTLとして機能することを確認でき、第3者由来EBウイルス特異的CTL臨床第I相試験においても対象HLAが拡大できた。
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今後の研究の推進方策 |
1)造血幹細胞移植後にEBV再活性化およびウイルス特異的CTL体内動態の観察 引き続き移植後の患者末梢血液中においてEBV-DNA定量を行い、ATG使用例においてDay7、Day14、Day28の保存血清中のATG血中濃度をELISA法により測定し、EBV再活性化との関連を検討する。またEBV再活性の新規症例においては、Rituxan投与前後にフローサイトメトリー法による末梢血中のリンパ球サブセットの解析を行い、CD20陰性CD19陽性細胞の有無を同定する。Rituxan投与後にEBV-DNA増加症例においては、EBERに対するプローブを用いたフローサイトメトリーFISH法を用いてEBV感染細胞の同定を行い、EBV特異的CTLテトマラー染色により患者体内のEBV特異的CTLのモニタリングを行う。これらの因子がEB-LPDの発症予測、および治療の有効性予測に有用であるかどうかを明らかにする。 2)EBV特異的CTL存在下で発症するEB-LPDにおけるエスケープメカニズムの検討 造血幹細胞移植後に体内にEBV特異的CTLが存在しながら免疫抑制剤を中止してもEB-LPDが縮小しない症例では、EB-LPDと診断されたリンパ節生検からDNAを抽出し、HLAをタイピングし、HLA-LOHについて同定し、SNPアレイ法によりHLAをコードする6番染色体短腕上のUniparental disomy(UPD)について検討する。HLA欠失のない症例ではLMP2,EBNA3A,EBNA3BといったEBV抗原発現についてRT-PCR法を用いて検討する。 3)第3者ドナーからのEBウイルス特異的CTL療法の開始 ウイルス特異的CTL療法適応症例の最適化および対象HLA拡大による患者リクルートを行い、第I相試験を開始した。移植研究班、学会を通じてアナウンスし症例を蓄積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
第3者ウイルスCTL療法が再生医療新法に承認されたが、書類、体制整備のため研究開始が遅れたため、次年度使用に研究費を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
ウイルス特異的CTL培養、のため細胞培養試薬(培地、抗生物質など)およびサイトカイン(IL-2)が必要である。フローサイトメトリー関連試薬としてモノクローナル抗体、モノクローナル抗体磁気ビーズ、フローシース液が必要である。CTL細胞によるEBV感染細胞障害活性試験を行うためCr release assay用の51Crが必要である。また培養、フローサイトメトリーに使用するフラスコ、96穴プレート、チップ、FACS用チューブが必要である。海外発表、資料収集、成果発表のために旅費が必要である。
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