研究課題
日本における小児期の急性脳炎・脳症においては、インフルエンザ脳症、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)脳症が、この順に頻度が高い。この2つの脳症は、世界的に日本からの報告例が多いことが特徴である。インフルエンザ脳症では、炎症性サイトカインなどを介して神経障害を起こすことが報告されている。その他、特定の遺伝子の関与や代謝異常との関連を示唆する症例報告はあるが、病態は十分に解明されていない。HHV-6脳症でも炎症性サイトカインと病態との関連が示唆されているが、病態解明は進展していない。メタボローム解析とは、生体内の約3,000種の低分子代謝物質を網羅的に解析する手法である。この解析を応用し、日本での頻度が相対的に高い2つの急性脳症の新規バイオマーカーを発見し、病態解明・診療の向上に役立つことを目指す。インフルエンザ脳症、HHV-6脳症の解析で抽出した新規バイオマーカー候補(それぞれ5種類、13種類)のうち、対象例を増やした検討から、キヌレニン・キノリン酸をバイオマーカーの有力候補と考えた。本年は、髄液中のキヌレニン・キノリン酸濃度の上昇が神経障害に至る機序の解析を行った。2つの脳症では、血液脳関門の傷害(透過性亢進)により脳浮腫が惹起される機序が想定されるため、サルの初代培養細胞によるin vitro血液脳関門組織モデルを応用して実験を行った。その結果、キノリン酸は血液脳関門における透過性亢進を引き起こすことが示唆された。症例を蓄積し、臨床応用を目指すためにアッセイキットの作成を継続している状況である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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