研究課題/領域番号 |
26461582
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
八角 高裕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00511891)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血球貪食性リンパ組織球症 / 迅速スクリーニング / 病態解析 |
研究実績の概要 |
血球貪食性リンパ組織球症(HLH)の病態解明を目的に、以下の項目について研究・解析を行った。 A)機能解析・蛋白発現解析・遺伝子解析による原発性HLHスクリーニング:前年度に引き続き、当科に解析依頼のあったHLH症例に対して、①NK細胞及びCTLの脱顆粒機能解析、②家族性HLH(FHL)の責任蛋白発現解析、③既知の原発性HLHの責任遺伝子解析を行い、通常の遺伝子解析では変異を同定出来なかったが①②の方法でFHL3型の診断が可能であった症例を経験し、その原因が遺伝子の部分重複である事を解明した。 B)FHL遺伝子変異の機能解析系確立:FHL3患者由来のCTLライン作成に成功し、同細胞に変異UNC13DのcDNAコンストラクトを強制発現させて、蛋白発現や脱顆粒機能に与える影響を解析する系の確立にほぼ成功した。 C)HLH患者由来iPS細胞ライブラリーの作成:FHL3症例由来iPS細胞株は作成済みである。その他のHLH症例由来の細胞を多数保存しており、必要に応じてiPS細胞を樹立する準備を整えている。 D)バイオマーカー解析によるHLH病態解析:FHL3に加え、EBV-HLHや原因不明二次性HLH症例のCTLラインを作成しており、これら細胞株を用いたトランスクリプトームやプロテオーム解析の準備を整えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A)原発性HLHスクリーニングに関しては、通常の遺伝子解析では診断困難である症例に関しても有効であることが示され、症例集積も順調に進んでいる。 B)FHL遺伝子変異の機能解析系確立に関しては、FHL3患者由来のCTLライン作成に成功し、同細胞に変異UNC13DのcDNAコンストラクトを強制発現させて、蛋白発現や脱顆粒機能に与える影響を解析する系も確立しつつあり、順調に推移している。 C)HLH患者由来iPS細胞ライブラリーの作成に関しては、FHL3症例由来のiPS細胞株は既に樹立しており、今後の作成に向けて多数のHLH症例由来の細胞を保存している。 D)バイオマーカー解析によるHLH病態解析については、保存血漿サンプルを用いた網羅的なサイトカイン解析は、検体採取時期や保存方法の問題が多く現実的では無い事が判明したため、患者由来CTLラインを用いたトランスクリプトームやプロテオーム解析を行う方法への変更を進めている。これに向けて、FHLやEBV-HLH、原因不明二次性HLH症例のCTLライン作成を進めている所である。 総合的に見ると、昨年度の問題点をかなり克服出来ており、ほぼ遅れを取り戻している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は計画の最終年度であり、以下の項目別に解析を行う予定である。 A)原発性HLHスクリーニングをこのまま継続して症例を集積すると共に、病態解析に使用する検体の採取・保存を行う。 B)FHL遺伝子変異の機能解析系確立に関しては、FHL3患者由来のCTLライン作成に成功しており、変異UNC13Dが蛋白発現や脱顆粒・細胞傷害機能に与える影響を解析し、得られた情報を基にMun13-4蛋白の構造や機能についての解析へと発展させる。加えて、同様の方法でFHL2の機能解析系の確立を行う予定である。 C)HLH患者由来iPS細胞ライブラリーの作成に向けて症例の集積を継続すると共に、NK細胞やCTLの分化誘導系の確立を目指す。 D)HLH病態解析に向けたバイオマーカー解析については、患者由来CTLラインを用いたトランスクリプトームやプロテオーム解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
FHL遺伝子変異の機能解析系に於ける細胞傷害活性の測定がやや遅れており、必要な試薬の購入費がわずかに残っている。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞傷害活性の測定系自体はほぼ確立しており、H28年度には予定通りの解析が行える予定である。
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