研究課題
Chicken-beta-actinプロモーター下にTEL-AML1融合遺伝子を発現するマウスES細胞を作製した。TEL-AML1融合遺伝子はES細胞の造血細胞や血管内皮細胞への分化を抑制するが、これらの前駆細胞であるTie2陽性細胞は減少しているが形成される。TEL-AML1融合遺伝子を発現するマウスES細胞を未分化造血細胞分画であるTie2陽性細胞へ分化させて免疫不全マウス(NOGマウス)に移植した。移植後1年程度の観察期間でも有意な白血病の発症は認めず、TEL-AML1融合遺伝子単独では白血病の発症に十分ではないことが示された。付加的遺伝子異常を導入するためにTEL-AML1融合遺伝子を発現するTie2陽性細胞にレトロウイルスベクター(MSCV)による挿入変異を導入した。レトロウイルスベクターを導入したTie2陽性細胞をNOGマウスに移植すると、マウスの骨髄内ではB220陽性のBリンパ球に分化した細胞の生着と増殖を認めた。これらのB220 陽性細胞はTEL-AML1融合遺伝子を発現していた。移植マウスでは肝臓や肺、軟部組織などにB220陽性細胞の浸潤による腫瘍形成を認めた。明らかな白血病の発症は認められなかったが、B220陽性細胞の浸潤・増殖を認めたことから、レトロウイルス挿入により、TEL-AML1を発現するTie2陽性細胞の増殖能亢進が得られたと考えられた。移植マウスに認められた腫瘍から抽出したDNAを用いて、レトロウイルスの挿入部位を同定し、TEL-AML1の腫瘍化に協働する遺伝子の同定を試みた。その結果レトロウイルス挿入部位にはCamk2b等の遺伝子が同定され、多くの場合、レトロウイルス挿入は遺伝子のコーディング領域内で生じており、遺伝子の発現異常が疑われた。同定された遺伝子の発現異常をヒト白血病細胞で確認したところ、発現減弱や亢進の発現異常が一部の症例で認められた。これらの遺伝子の発現異常がTEL-AML1融合遺伝子と協働して腫瘍化に作用するメカニズムについて今後検討を加えていく。
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