研究課題
本研究はEpstein-Barr (EB)ウイルス感染に伴い発現変化するBリンパ腫細胞遺伝子の解析と同定を行うものである。移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disorder: PTLD)は、免疫抑制状態において、EBウイルス感染により惹起される。EBウイルスがコードするLMP1やEBNA2陽性のB細胞の増殖を許し、リンパ腫が発症すると考えられている。これまでのPTLDの病態に関する研究では、B細胞の無制限増殖に働く責任EBウイルス遺伝子の同定に主眼が置かれていた。その一方で、PTLDのようなEBウイルス発現パターン(LMP1, LMP2A, EBNA2などを発現するⅢ型EBウイルス感染様式)を有するリンパ腫において、どのような細胞側遺伝子が発現あるいは抑制され、それがどう働くかについての詳細は明らかにされていない。我々は同一症例からEBウイルス陽性(Ⅲ型EBウイルス感染様式)とEBウイルス陰性のB細胞リンパ腫の樹立に成功した。これらリンパ腫細胞からRNAを抽出し、cDNAに変換後、その2株の遺伝子発現パターンをアレイシステムで比較解析した。EBウイルス陰性リンパ腫細胞に比べて、EBウイルス陽性リンパ腫細胞において発現が亢進されていた遺伝子は、ケモカインをコードする遺伝子、細胞の接着や遊走に関する遺伝子、細胞分裂を調節する遺伝子などが同定された。
2: おおむね順調に進展している
同一クローン細胞由来のEBウイルス陽性(Ⅲ型EBウイルス感染様式)とEBウイルス陰性のB細胞リンパ腫細胞株を用いて、EBウイルス感染に伴い発現が亢進する宿主側遺伝子の候補をあげることができた。よって、本研究は当初の計画通りに進展していると判断した。
さらにアレイ解析を進めて、EBウイルス感染に伴い発現が亢進あるいは減弱する遺伝子を探索する。得られた結果をmRNAレベルで確認し、さらに蛋白発現解析を行う予定である。
本年度は試薬を中心に物品費の支出を最低必要限に抑えて予算を執行したため、若干の繰越金が発生した。
次年度は遺伝子検出関連試薬、蛋白発現解析用試薬、プラスティック器具などの物品費、成果発表のための国内旅費、学術誌掲のための費用および人件費・謝金に充てる。また研究の続行に必要な備品を購入する。
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Clin. Exp. Nephrol.
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10.1007/s10157-015-1209-9
10.1007/s10157-016-1231-6