研究課題
本研究はEpstein-Barr(EB)ウイルス感染に伴い発現変化するBリンパ腫細胞遺伝子の解析と同定を行うものである。これまでのEBウイルス関連リンパ増殖性疾患の病態に関する研究では、細胞の無制限増殖に働く責任EBウイルス遺伝子の同定に主眼が置かれていた。しばしば免疫抑制状態の個体で発生するEBウイルス関連リンパ増殖性疾患のウイルス発現パターンはLMP1、LMP2A、EBNA2などを発現するⅢ型感染様式を示す。このⅢ型EBウイルス感染様式を示すB細胞リンパ腫において、どのような細胞側遺伝子が発現あるいは抑制され、それがどう働くかについての詳細は明らかにされていない。我々は同一症例から同じクローン由来のEBウイルス陽性(Ⅲ型EBウイルス感染様式)とEBウイルス陰性のB細胞リンパ腫の樹立に成功した。これらリンパ腫細胞からRNAを抽出し、cDNAに変換後、その2株の遺伝子発現パターンをアレイシステムで比較解析した。EBウイルス陰性リンパ腫細胞に比べて、EBウイルス陽性リンパ腫細胞において発現が2.54倍以上(Zスコア:2倍以上)亢進されていた遺伝子群についてパスウェイ解析(KEGGパスウェイ解析)を行ったところ、最大の有意差をもって同定されたパスウェイタームは、“Transcriptional misregulation in cancer” であった。この中にはBMP2、LMO2、MLL3、CCND2、IGF1R遺伝子などが含まれていた。これら遺伝子はEBウイルス感染により発現が亢進され、EBウイルス感染リンパ腫の病態形成に関わることが示唆された。今後もこれら遺伝子を詳細に解析し、Ⅲ型EBウイルス感染様式を示すB細胞リンパ腫の病態解明の一端に迫りたい。
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