研究課題
基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌は、尿路病原性大腸菌(UPEC)を中心に近年著しく増加し臨床上問題になっているが、小児腸管由来大腸菌における検出頻度を長期的に観察し、その病原性や遺伝的多様性を検討した研究は少ない。今年度は、小児便由来大腸菌におけるESBL遺伝子blaCTX-M遺伝子の保有頻度とその年次推移を明らかにするとともに、病原遺伝子との関連を検討した。対象は、2001~13年に鹿児島県で収集した下痢症患児便由来大腸菌7,495株から検出したESBL遺伝子blaCTX-M保有株192株。下痢原性大腸菌(DEC)とUPECの病原遺伝子および髄膜炎に関連するK1莢膜遺伝子neuCをPCRで検出した。blaCTX-M保有株は03年に出現し、その後年々増加し2013年には10.7%に達した。CTX-M型は、14 (62%)、27 (16%)、15 (12%)の順に多かった。blaCTX-M陽性株192株中、腸管凝集性大腸菌(EAEC)の転写因子aggR を19%(36株)が保有し、そのO血清群はUPECに多いO25から11年以降本来のEAECに多いO111に移行した。さらに12年には、腸管病原性大腸菌(EPEC)の付着遺伝子eae保有株が2株出現した。K1莢膜遺伝子neuCは15.1%(29株)にみられ、髄膜炎原因菌に多いO1とO18が11年から増加した。以上の結果から、小児下痢症患児由来大腸菌においてblaCTX-M陽性株は急増しており、小児腸管内でのblaCTX-Mの顕著な水平伝播が示唆された。下痢原性大腸菌であるEAEC、EPEC、さらに髄膜炎の原因菌に多いO1・O18 K1莢膜陽性大腸菌にも伝播しており、便由来大腸菌の病原遺伝子と薬剤耐性遺伝子の水平伝播の監視が重要である。
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