研究課題
本研究の目的は、小児急性骨髄性白血病(AML)の発症や進展に関わる分子機構を解明し、治療の層別化や分子標的薬の創薬に結びつけることにより、予後の向上に結びつけることにある。本年度我々は、小児AML20症例で、次世代シーケンサーによる全エクソン解析による網羅的ゲノム解析を行い、得られた複数の新規遺伝子異常について、日本小児白血病リンパ腫グループ(JPLSG)のAML-05臨床試験に登録された370例で標的深読み塩基配列解析を行った。また、リアルタイムPCR法を用いてAML99研究における発現アレイ解析から抽出された複数の遺伝子について発現解析を行い、NUP98-NSD1 signatureの再現性について検討するとともに、NUP98-NSD1融合遺伝子とその類似発現の症例において全RNA解析を行った。JPLSGのAML-05臨床試験の370例について、multiplex ligation-dependent probe amplification(MLPA)解析を用いて、既知のMLL-PTDやCDKN2A/2B、RB1、IKZF1等のコピー数解析を行った。上記の解析で得られた遺伝子異常を有する症例の臨床的特徴について検討を行い、複数の治療の層別化の候補となる予後関連因子が見出されている。今後、本研究で集積した大量の遺伝子データおよびJPLSGと群馬県立小児医療センターの白血病データベースによる臨床データの解析により、白血病の病型と関連のあるゲノムパターンの異常、メチル化の特徴を抽出し、遺伝子・ゲノム、エピゲノムの異常に基づいた、病型診断、予後予測が構築できる可能性について詳細な検討を行ったり、本研究で新たに見出された遺伝子異常について、機能解析を行うことにより、それらの腫瘍化との関連性のさらなる検証を行い、標的遺伝子の同定を試みる予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は、次世代シーケンサーによる全エクソン解析とリアルタイムPCRによる遺伝子発現解析、MLPA法によるコピー数解析を行い、概ねに予定してされていた解析を行うことができた。また、得られた遺伝子異常について、JPLSGと群馬県立小児医療センターおよび関連施設の患者の詳細な臨床データベースを用いて、臨床的特徴について検討を行い、複数の治療層別化の候補となる遺伝子異常を見いだすことができており、概ね順調に進展していると考えられる。
今後、全エクソン解析が終了した20例に加え、さらに小児AML 40例について、次世代シーケンサーを用いた全エクソン解析を行い、新規の候補となる遺伝子異常の検索を行う。また、平成26年度に計画していたMeDIP-on-CHIP法とAffymetrix社製HuamanPromotor 1.0 arrayを用いたメチル化の網羅的解析を行い、エピジェネティックな転写抑制機構についても解明を試みていく。本研究で集積した大量の遺伝子データおよびJPLSGと群馬県立小児医療センターの白血病データベースによる臨床データの解析により、白血病の病型と関連のあるゲノム異常、メチル化の特徴を抽出し、遺伝子・ゲノム、エピゲノムの異常に基づいた、病型診断、予後予測が構築できる可能性について詳細な検討を行い、新規予後予測因子の同定に基づくリスク別層別化も試みる。
平成26年度に計画していたMeDIP-on-CHIP法とAffymetrix社製HuamanPromotor 1.0 arrayを用いたメチル化の網羅的解析を行うことができなかったため。
平成27年度に計画していた新規分子診断法の開発とリスク別層別化の実用化と標的遺伝子の同定と遺伝子性状の解析、in vitroにおける造腫瘍性に関する検討と合わせて、平成26年度に計画していたMeDIP-on-CHIP法とAffymetrix社製HuamanPromotor 1.0 arrayを用いたメチル化の網羅的解析も行っていく。
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