研究課題
腎芽腫は小児腎腫瘍の90%を占める。医学の発展、集学的治療と年齢・病期・病理組織型によるリスク分類に従って層別化された治療により、5年生存率は90%に改善されたが20%は再発し10%の腎芽腫患児は死亡に至る。これまでに我々はWTX遺伝子異常が腎芽腫の強力な予後因子であることを明らかにしてきた。最近、腎芽腫の新規遺伝子として胎児腎形成に関与する転写因子SIX1およびSIX2とmiRNAの生合成に関わる遺伝子群(miRNAPGs: DROSHA、DICER1、XPO5、および DGCR8)が同定された。COGからの報告ではSIX1/2とmiRNAPGs両方に遺伝子異常を呈する腎芽腫は予後不良であり、SIOPからの報告ではそれぞれの異常が予後あるいは悪性度と相関する可能性が示唆された。本年度は昨年度実施できていなかったDICER1遺伝子の変異解析を行うとともに、SIX1/2、DROSHAおよびDGCR8遺伝子の解析検体数を増やし日本人腎芽腫132症例の変異解析の結果を得た。また、MYCN遺伝子の変異や増加および1番染色体の増加が予後と相関すると海外から報告され、これらの異常についても解析した。我々が予後不良因子であると考えているWTX遺伝子異常と新たな予後因子との相関を解析した。日本人腎芽腫ではSIX1/2遺伝子異常、miRNAPGs異常、MYCN遺伝子変異や増加および1番染色体の増加は予後との相関が認められなかった。これらの結果は日本人と海外の腎芽腫ではその特徴が異なることが示唆された。また、WTX遺伝子異常とこれらの新規予後因子の異常がともに生じている腎芽腫は認めなかった。
3: やや遅れている
海外より2015年に転写因子(SIX1およびSIX2)と microRNA processing genes (miRNAPGs; DROSHA, DGCR8, DICER1)の遺伝子異常を生じた腎芽腫は予後不良であるとの報告がなされた。COGからの報告ではSIX1またはSIX2とmiRNAPGs両方に遺伝子異常を呈する腎芽腫は予後不良であり、SIOPからの報告ではそれぞれの異常が予後あるいは悪性度と相関する可能性が示唆された。また、昨年度MYCN遺伝子の変異や増加が予後と相関すると海外から報告された。そのため、これらの遺伝子異常と我々が予後不良因子であると考えているWTX遺伝子異常との相関を腎芽腫132検体で解析したため、当初の予定通り研究を進めることが出来なかった。
WTX遺伝子異常を有する腎芽腫の生存症例と腫瘍死症例の染色体異常をSNPs array解析にて明らかにし、腫瘍死症例特異的な染色体異常を解析する。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
Br J Cancer
巻: 112 ページ: 1121-1133
10.1038/bjc.2015.13.
Pediatr Int.
巻: 57 ページ: 828-31
10.1111/ped.12787.
http://www.pref.saitama.lg.jp/saitama-cc/kenkyujo/kenkyujo.html