研究課題
腎芽腫は小児腎腫瘍の85-90%を占める。医学の発展、集学的治療と年齢・病期・病理組織型によるリスク分類に従って層別化された治療により、5年生存率は85-90%に改善されたが25%は再発し10-15%の腎芽腫患児は死亡に至る。更なる腎芽腫の治療成績の改善および副作用や晩期障害の軽減のためには、予後予測分子マーカーを用い更に患児を層別化することによりリスクに適した治療を実施していく必要がある。これまでに我々は既知原因遺伝子異常の解析および網羅的な染色体解析を腎芽腫121検体で実施し、WTX遺伝子異常が腎芽腫の予後不良因子であることを明らかにしてきた。一方、海外の解析から1q gain、17p loss、MYCN gain、あるいは1pと16qの両領域にLOHまたはSIX1/2遺伝子および/またはmicroRNA processing pathways (DICER1, DROSHA, DGCR8)遺伝子異常を呈する腎芽腫の予後が不良であることが明らかになった。しかしながら、本研究における解析から欧米人腎芽腫とは異なり日本人腎芽腫においてはこれらの染色体・遺伝子異常と予後不良との相関は認められなかった。WTX遺伝子異常を有する腎芽腫が全て腫瘍死に至るわけではない。そこでWTX遺伝子異常を有する腎芽腫の生存症例および腫瘍死症例特異的な染色体異常を明らかにするため、WTX遺伝子異常症例でSNP array解析を行ったが生存例および腫瘍死症例特異的な染色体異常は見いだせなかった。現在、WTX遺伝子異常を呈する腎芽腫患児の予後が不良であるそのメカニズムについては明らかにするため、WTX遺伝子欠失腎芽腫4症例と予後良好なWT1遺伝子異常腎芽腫6症例の網羅的遺伝子発現解析を行っている。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Pediatr Surg Int.
巻: 32 ページ: 851-855
10.1007/s00383-016-3929-7.
小児外科
巻: 48 ページ: 1129-1132
http://www.pref.saitama.lg.jp/saitama-cc/kenkyujo/index.html