研究課題/領域番号 |
26461602
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
巽 康年 千葉県がんセンター(研究所), 研究所 腫瘍ゲノム研究室, 研究員 (00450578)
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研究分担者 |
中川原 章 千葉県がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (50117181) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / BMCC1 / E2F1 / 転写制御 / 細胞周期 / 細胞死 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、小児固形腫瘍の中でも患者数が多く、また進行すると難治性を示す神経芽腫を対象とし、我々のグループが神経芽腫の予後良好症例で高発現する多機能タンパク質として同定し明らかにしてきたBMCC1が、細胞周期及び細胞死の進行に重要性が知られる転写因子E2F1によって発現が制御されることを明らかにするとともに、この制御下でBMCC1が細胞増殖及び細胞死を調節する分子基盤と神経芽腫の自然退縮及び悪性化防止メカニズムの解明を目的としている。本年度は以下の内容を明らかにした。 項目1:細胞に対してDNA障害を与えるとE2F1の発現が亢進することが知られているが、本年度は、神経芽腫細胞株に対して複数の抗癌剤でDNA障害を与えると、BMCC1の発現が転写レベルで誘導されること、これはE2F1依存的であることを見出した。一方、E2F1は細胞周期で発現が変動し、その発現が上昇するG1-S期にDNA複製に関わる因子の発現を誘導することが知られている。我々は、BMCC1の発現がE2F1タンパク質量の増加するG1-S期に転写レベルで亢進すること、これはCdt1やMycなど他のE2Fで制御される因子と同様にE2F1依存的であることを明らかにした。 項目2および項目3:本年度は、神経芽腫細胞株を用いてBMCC1を発現抑制したところ、S期の減少を伴い細胞増殖が遅延することを見出した。平行して進めているBMCC1ノックアウトマウスの解析と総合すると、BMCC1は生存には必須でないものの、細胞の増殖促進にも関わることが示唆された。 以上の研究成果の一部は、第74回日本癌学会学術総会(口演)および第38回分子生物学会年会・第88回日本生化学会大会・合同大会(ポスター)で報告するとともに、学術論文として投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的の一つはE2F1によるBMCC1の転写レベルでの発現制御の理解であるが、この点に関してはほぼ解明できたと考える。さらに、この制御機構がDNA損傷によって誘導される細胞死の過程および細胞周期の進行に寄与することを突止め、その機構を明らかにしつつある。さらに、E2F1によるBMCC1の転写レベルでの発現制御と神経芽腫の予後との関係について、神経芽腫症例を用いた解析から検討中である。以上の成果については、複数の学会で報告しており、論文報告も予定している。 このように、本研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、E2F1により発現亢進したBMCC1が自然退縮を含む神経芽腫の予後に及ぼす分子メカニズムについて細胞株と神経芽腫症例の解析などから詳細に検討を進める。また、神経芽腫症例の解析からRB/E2F経路の異常が神経芽腫の悪性化と関連することを突き止めており、これを含めたBMCC1の発現抑制機構についても調べる。以上の研究成果を総合し、本研究課題をまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、細胞株を用いた機能解析を中心に少人数で進めていたため、結果として支出が予定を下回った。さらに、翌年度はこれまでの研究成果を受けて、研究規模を拡大する必要があり、これを鑑みて予算を繰越した。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度は、これまでの成果を踏まえて研究を発展させることを計画しており、繰越し分は人件費として使用する予定である。
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