研究実績の概要 |
BMPR2遺伝子変異は肺動脈性肺高血圧(PAH)患者で見られるがその役割は明らかではない。PAH血管病変形成には、血管壁を構成する、血管内皮、血管平滑筋、繊維芽細胞ばかりでなく、マクロファージ、樹状細胞、リンパ球などの炎症細胞も重要な役割を担っていると考えられさらに、PAH患者ではIL-1、IL-6、TNF-,GM-CSFなど炎症性サイトカインの上昇が認められ、臨床的にも炎症機序の関わりが示唆されている。BMPR2の減少した肺動脈内皮細胞では、p38MAPK の活性化がみられ、サイトカイン産生が亢進し、ヒトIPAH病変の病変血管への炎症細胞集積に関与する事さらに、抗GM-CSF抗体投与は低酸素誘発肺高血圧を改善することを示した(Sawada H, 2014)。しかし、ヒトPAHにおいて、その病態を規定する病変、つまり治療の標的とすべき病変は、血管閉塞性の内膜肥厚であり、従来、モノクロタリンモデルや低酸素暴露モデルなど、PAH研究に用いられる動物モデルの血管病変は中膜肥厚が主体であり内膜肥厚を来すモデルの報告は非常に限られていることが課題であった。本研究では、最近報告された、血管内皮増殖因子受容体阻害剤SU5416投与と低酸素環境に暴露された叢状病変などヒトPAHと類似の病変を形成するモデルを用いた。本モデルの、病変部位では、平滑筋細胞形質転換と炎症細胞集積、さらに肺組織のサイトカイン(IL6, MCP1, MMP9, cathepsin-S, and RANTES)上昇が確認された。これらの所見から、炎症機序のヒトPAHに対する治療標的としての可能性が示された。(Otsuki S, 2015、Shinohara T, 2015)
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