研究実績の概要 |
LQTS患者由来iPS細胞から分化した心筋細胞を用いてin vitroでの診断系を構築ことを目的とした。 LQTSの90%以上を占めるLQTS1, LQTS2, LQTS3の異常チャネルは各々IKs, IKr, INaであることに注目し、LQTS患者から樹立したiPS細胞を心筋分化させて実験を行った。例えばLoss of Functionのイオンチャネルをブロックしても活動電位変化は殆ど認めないが、正常のイオンチャネルをブロックすれば活動電位が大きく影響するとの考えから、コントロールiPS細胞由来心筋(C-iPS-CM)とLQTS iPS細胞由来心筋(LQTS-iPS-CM)に各々のチャネル阻害剤や活性化試薬を投与することで活動電位の延長率について評価を行った。活動電位の延長は、パッチクランプによる評価だけでなく、より簡便なMulti-electrode arrayシステムを使用して、心電図でのQT時間に相当するfield-potential duration(FPD)を評価した。結果、LQTS1, LQTS2に対してそれぞれクロマノール、E4031を投与し、C-iPS-CM2比べてLQT-iPS-CMで優位に活動電位延長率が低かった。また濃度を選択することで、その結果の特異度感度ともに90%以上で診断可能であった。LQT2のNaチャネルについては、現在実験中であり、阻害薬または活性化剤のいずれが診断位有用か検討中である。LQTS2 iPS細胞については遺伝子変異を修正したiPS細胞(LQT2corr-iPS-CM)を樹立し同様の実験を行った。結果、LQT2corr-iPS-CMの薬剤に対する反応はほぼC-IPS-CMと同様であった。 以上より、遺伝子異常を検査するより正確でかつ薬剤選択や生活指導に直接結びつく診断方法が確立された。
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