研究課題/領域番号 |
26461609
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
別所 一彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80423169)
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研究分担者 |
近藤 宏樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 招へい教員 (10373515)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 胆道閉鎖症 / 胆汁うっ滞 / 腸内細菌叢 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまで、ロタウイルス誘導性胆道閉鎖症モデルに於いて妊娠母体マウスを抗生剤の一種であるST合剤含有の飼料のもとで飼育すると、生後新生仔マウスにロタウイルスを腹腔内投与しても胆汁鬱滞が一過性で、その後の肝外胆管の閉塞が抑制され生存率が改善することを示した。また胆道閉鎖症患者の葛西術時の肝組織内で疾患コントロールおよび正常コントロールと比較して特異的に発現が制御されている15遺伝子を同定し、そのうち7遺伝子がNFκBもしくはRelAによる発現制御を受け得る事を明らかにした。さらに微生物の粘膜への感染に応答して産生され、TLR4-NFκB経路を介して宿主の自然免疫系を活性化することが知られる抗菌ペプチド:β-defensinの発現が葛西術時の患者肝組織および移植時摘出肝で上昇していることを見いだした。これらのデータはモデルマウスのみならず、ヒト患者でも体内の細菌環境が胆道閉鎖症の病態に深く関与していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度の本年は達成目標のうち、大阪大学医学部附属病院で新規に胆道閉鎖症と診断され葛西手術を受けた4人の患者の診断時の血清および便検体を得ることができた。また、葛西術時の患者肝組織におけるTLR4の発現を解析するために申請者が保存していたホルマリン固定肝組織に対して抗TLR4抗体を用いた免疫組織染色の条件検討を行った結果、Abcam社のAnti-TLR4 抗体 [76B357.1] を用い葛西術時の肝臓では肝臓の常在細胞だけでなく少なくとも浸潤免疫細胞の一部がTLR4を発現していることを明らかとした。 一方でロタウイルス誘導性胆道閉鎖症マウスモデルの作成とTLR4ノックアウトマウスの繁殖に関しては、マウスに腹腔内投与するロタウイルスを米国より国内に輸送する手続きが煩雑である事、マウスを扱う実験を実施する予定であった大学院生が他のプロジェクトに従事することになったため保留されている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度に施行予定の腸内細菌叢のプロファイリングに向けて、胆道閉鎖症乳児、胆汁鬱滞コントロール、正常乳児の便検体の収集を継続する。 肝内のTLR4発現細胞を同定するために、抗TLR4抗体と各種細胞マーカーを用いて二重染色を行う。 大阪大学医学部付属動物実験施設にウイルス感染を行える準備は整っているのでウイルスを米国より輸入して胆道閉鎖症マウスモデルの国内での確立を目指し条件検討を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
胆道閉鎖症モデルマウス作成のために必要なウイルスの輸入が遅延しており、マウスの購入費・維持費、モデルマウスの解析費を使用しなかった。また腸内細菌叢プロファイリング(受託研究)は患者試料をを集積した上で、最終年度に一括して解析を行うことにしたので、今年度は支出しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、マウスに投与するロタウイルスの確保予定が決まり次第、胆道閉鎖症モデルマウスの作成と解析に取りかかる。そのために次年度使用額を申請する次第である。
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