研究課題
これまで申請者は、抗生剤の1種であるスルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤(ST合剤)含有食餌下で飼育する母マウスから生まれた新生仔マウスを用いてロタウイルス誘導性胆道閉鎖症モデルを作成すると、新生仔マウスでウイルス投与後の肝外胆管の炎症が抑制され、胆管閉塞を免れた結果マウスの死亡率が半分に抑制されることを明らかにした。さらに今回、共同研究先のCincinnati Children’s Hospital Medical Centerとの共同研究に於いて、ST合剤食餌下で作成した胆道閉鎖症モデルの新生仔マウスの糞便中の細菌叢を16S DNAプローブを用いて網羅的に解析したところ、通常の食餌下で作成した胆道閉鎖症新生仔マウスと比べて特徴的な腸内細菌叢の変化が認められることが確認された。この細菌叢の変化の中で特徴的なものとして、胆道閉鎖症患者において肝門部空腸吻合術後に肝内病変の進行を駆動すると考えられている胆管炎の際に血液培養中で検出されることの多いグラム陰性菌の一部が減少していることが判明した。この発見は当研究の仮説の一つである「胆道閉鎖症の発症時期における肝外胆管の閉塞」と「肝門部空腸吻合術後による胆汁の再ドレナージ後も進行する肝内胆管病変」の病態に腸内細菌環境が関与していることを裏付けるデータであると言える。
4: 遅れている
研究3年目の昨年度は達成目標のうち大阪大学附属病院で新規に胆道閉鎖症と診断された患者が1名の患者の診断時の血清及び便検体を得ることが出来た。また葛西術術時の患者肝組織におけるTLR4の発現を解析するためにホルマリン固定後保存していた肝組織の染色用スライドを作成を継続した。一方でロタウイルス誘導性胆道閉鎖症モデルマウスの作成とTLR4ノックアウトマウスの繁殖に関しては、マウスに腹腔内投与するためのロタウイルスを米国より国内輸送する手続きが煩雑であること、マウスを扱う実験を実施する研究協力者が得られず、保留されている。
補助金交付を延長し、本年中も引き続き胆道閉鎖症乳児、胆汁うっ滞コントロール、正常乳児の便検体の収集を継続し、年度内に腸内細菌叢のプロファイリングを行う。また胆道閉鎖症肝におけるTLR4の発現細胞を同定するために、抗TLR4抗体及び各種細胞マーカーを用いた二重染色を行う。本年度は研究協力者の実験手技の訓練が終了し、実験計画を実行に移すことが出来ると考えている。
腸内細菌叢のプロファイリング(受託研究)は患者試料を集積した上で最終年度に一括して解析を行うため、今年度は支出しなかった。
患者検体を用いた細菌叢の解析を今年度一括して行う予定としている。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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