研究課題/領域番号 |
26461614
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
香美 祥二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00224337)
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研究分担者 |
漆原 真樹 徳島大学, 大学病院, 講師 (50403689)
谷口 寿章 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 教授 (10257636)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レニン・アンジオテンシン系 / アンジオテンシノーゲン / アンジオテンシンII / ペプチドミクス解析 / 培養細胞 / 尿バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、慢性腎臓病(CKD)の進展阻止を図るために糸球体レニン・アンジオテンシン系(RAS)の活性化やアンジオテンシンII(AngII)ペプチドの代謝機構(断片化機構)をペプチドミクス/プロテオミクス解析し、現存する RAS 阻害薬では得られない糸球体特異的なRAS阻害手段や新規のCKDバイオマーカーを探索することにある。われわれは従来より、ELISA法や免疫組織化学法を用いてRASの産物であるAng IIが糸球体局所でRAS基質、アンジオテンシノーゲン(AGT)より産生されておりCKDの進展に関わっていることを報告してきた。今回は、糸球体特異的なAng II分解経路の検討方法を確立するために、培養ヒト糸球体メサンギウム細胞(MC)を用いてペプチドミクス/プロテオミクス解析を行った。ペプチド分子のMS/MS分析により、培養上清中にはAGTや想定される代謝分解成分ペプチドAng I(1-9)、Ang1-9、 Ang II(1-8)、Ang1-7、Ang2-10、Ang III(2-8)、Ang IV(3-8) の他に、Ang1-5、Ang1-4、Ang3-10を検出することができた。MC培養環境でRASを作動させる多種のpeptidaseが存在し多様なペプチド断片が生じることが判明した。今回、確立した解析法を単離糸球体培養に応用しRAS代謝経路の検討を進める予定である。また、CKD患者の尿を用いて同様の解析と腎臓内のRASプチド断片の比較検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト糸球体MCにおけるRAS由来ペプチド断片化経路をMS/MS分析により検討することができた。本手法を応用することにより糸球体RAS代謝機構を検討することは可能であると思われた。現在、RAS代謝に関わる酵素(ACE,ACE2,アミノペプチダーゼA(APA),ネプリシン(NEP),プロリルカルボキシプチダーゼ(PCP), Chymase,Cathepsin)について発現分析(PCR法)するためのプライマー設計は終了している。速やかに、培養MC/単離糸球体を用いた検討に入る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
尿中バイオマーカーを検討するために、尿中RAS代謝由来の断片ペプチドの検出が必要である。今回、蓄尿した尿を用いてMS/MS分析を試みたが有意なピーク(RAS由来ペプチド)は検出できなかった。これは、腎尿路系に存在する多様なぺプチダーゼにより分解されたり、蓄尿過程での分解があるためと考えた。そこで次回は、採尿時やサンプル処理過程にぺプチダーゼインヒビターを加えることにより酵素分解を抑制してMS/MS分析を行う予定である。現存するELISA法によるAngIIペプチド検出法を並列で行い、われわれの手技に誤りがないかどうかも検討する。
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