研究課題
本研究は、慢性腎臓病(CKD)進展を左右する腎糸球体レニンアンジオテンシン系(RAS)の活性化・アンジオテンシン(Ang)ペプチド断片化機構を網羅的解析(ペプチドミクス/プロテオミクス解析)することにより、現存するRAS阻害薬では得られない糸球体特異的なRAS阻害手段や新規のCKDバイオマーカーを探索することを目的に行われた。平成26~27年度に得られた糸球体ペプチド断片化経路の基本データと糸球体RAS関連酵素発現プロファイルとの実質的関係を小児CKD患者において組織科学的に検討した。その結果、IgA腎症を代表とする慢性・進行性の小児CKD患者では糸球体内皮細胞(GEC)のACE依存性Ang II産生系、メサンギウム細胞(MC)とポドサイト(POD)におけるACE2依存性のAng II分解系が同時に作動しており、その発端は障害GECのアンジオテンシノーゲン発現上昇にあることを見いだした。特に、IgA腎症患児糸球体では、正常糸球体に比しAng 1-7、Ang IIが増殖部位に蓄積していた。同時に、蓄積部位にはAng I(1-10)を分解する酵素、Carboxypeptidase AとAng IIをACE2が強く発現していた。また、尿中ACE2排泄量は腎炎重症度(細胞増殖、タンパク尿)と相関しており新たなCKDの重症度診断のためのバイオマーカーとなりうることが示唆された。今後は、GEC、MC、PODそれぞれの細胞レベルでのRAS活性化機構と糸球体全体としてのRAS制御機構を解析することにより、腎炎進行性病変形成を阻止しうるAngペプチド作用阻害法の開発に取り組む予定である。
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Nephrology
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