研究課題
川崎病は離乳期前後の小児に好発する原因不明の血管炎として知られ、特に冠動脈炎に引き続いて起こる冠動脈後遺症については青壮年期における心血管病態との関連が懸念されている。川崎病治療については免疫グロブリン療法が標準的治療法として確立しているものの、全症例の20%前後はIVIGに抵抗性を示すことから、IVIGに代わる有効な新規治療法の確立が望まれている。本研究では遺伝子改変動物を用いて、非受容体型プロリンリッチチロシンキナーゼPyk2がマウス川崎病様血管炎の発症に必須であることを明らかにした。カンジダ細胞壁抽出物CAWSを野生型(WT)マウスの腹腔内に投与すると大動脈起始部から冠動脈分岐部を中心に川崎病様血管炎を発症するが、Pyk2 ノックアウトマウスはCAWS投与によっても血管炎を発症しなかった。血清のサイトカイン/ケモカイン動態の解析から, CAWSを投与したPyk2KOマウスでは、強力な血管新生阻害活性をもつことが知られるIP-10 およびMIGが持続的に高値を呈することがわかった。実際、CAWS誘発血管炎でみられる大動脈周囲の微小血管数の増加もPyk2KOマウスでは有意に抑制されていた。CAWS刺激で誘発されるIP-10およびMIGの持続的産生亢進の分子機序についてはさらなる研究が必要であるが、これらのケモカインの発現制御に関わるとされるSTAT1およびSTAT3のリン酸化動態を両系統マウス由来マクロファージを用いてin vitro 系で調べたところ、CAWS刺激に伴うSTAT3のリン酸化はPyk2KOマウス由来細胞では有意に低下していた。STAT3はこれらのケモカインの発現に抑制的に働くことが知られていることから、Pyk2マウスにみられる上記の特徴的なケモカイン動態は、STAT3を介したIP10およびMIGの発現抑制が十分に機能しないことと関係があると考えている。
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Clin Immunol
巻: 179 ページ: 17-24
10.1016/j.clim.2017.01.013.