研究課題/領域番号 |
26461618
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
中西 浩一 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (50336880)
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研究分担者 |
吉川 徳茂 和歌山県立医科大学, 医学部, 臨床研究センター長 (10158412)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多発性のう胞腎 / マイクロRNA / マイクロアレイ / 疾患特異的治療 |
研究実績の概要 |
多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease、PKD)は、わが国で最も頻度が高い遺伝性疾患であり、慢性腎不全の主要な原因の一つである。常染色体優性(ADPKD)と常染色体劣性(ARPKD)があり、臨床上の差違にもかかわらず共通の基本的病態生理が存在する。 本研究の目的は、多発性嚢胞腎の複数の基本的病態生理におけるマイクロRNA(miRNA)の関与とその機序を解明し、それらを修飾することによる病態生理に基づいた疾患特異的治療開発のための基礎的知見の獲得、およびそのヒトへの応用のためのモデル動物を用いた治療研究による効果の確認である。 PKDにおける尿細管上皮細胞は、増殖(過形成)・細胞周期異常、分泌(正常では吸収が主である)、細胞外基質異常・線維化を起こし、そのため嚢胞形成・腎不全にいたる。現在、PKDにおけるこれらの基本病態におけるmiRNAの関与およびその機序は不明である。本研究ではmiRNAがPKDの基本病態に関与しているという仮説により、その解明をめざす。 これまでに疾患マウスであるCPKマウスにおいて、腎のmiRNAマイクロアレイにより病態に関与すると推定されたmiRNAを同定した。対照と比較してCPKマウスにおいて増減があるmiRNAを選別し、2倍、4倍、8倍のレベルで増減を区切り、まず8倍の増減があるmiRNAをreal-time PCRで発現を確認し、マイクロアレイの結果を検証した。実際に有意な差を認める分子を同定することができた。次にこれらのmiRNAの生物学的意義を確認するとともに、血液、尿などにおける発現も検討し、疾患活動性の評価における有用性を検討し、バイオマーカーとしての意義も模索した。 今後は、それらのmiRNAの修飾を念頭に置き、疾患特異的治療開発の基礎的データの収集を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、多発性嚢胞腎の複数の基本的病態生理におけるマイクロRNA(miRNA)の関与とその機序を解明し、それらを修飾することによる病態生理に基づいた疾患特異的治療開発のための基礎的知見の獲得、およびそのヒトへの応用のためのモデル動物を用いた治療研究による効果の確認である。 これまでに病態に関与するmiRNAを同定を包括的に検索する目的で、マイクロアレイを導入した。まずマイクロアレイにより腎のmiRNAを検討した。対照と比較して疾患マウスであるCPKマウスにおいて増減があるmiRNAを同定した。2倍、4倍、8倍のレベルで増減を区切り、まず8倍の増減があるmiRNAをreal-time PCRで発現を確認し、マイクロアレイの結果を検証した。実際に有意な差を認める分子を同定することができた。 当初の計画では病態の関与が既知のmiRNAの解析を中心に計画したが、包括的検討によりさらなるmiRNAの検索を実施することにより、より効果的な研究をめざす。 本研究は、単なるmiRNAの病態への関与の確認のみでなく、最終的にはその修飾による疾患治療を念頭に置いているが、そこへの到達には克服すべき困難な課題が多数あり、得られた知見の有効利用の観点から、今年度においては血液や尿などにおける検討も併せて実施し、バイオマーカーとしての意義を検討した。 以上の理由により、本年度の研究進捗状況は、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、多発性嚢胞腎の複数の基本的病態生理におけるマイクロRNA(miRNA)の関与とその機序を解明し、それらを修飾することによる病態生理に基づいた疾患特異的治療開発のための基礎的知見の獲得、およびそのヒトへの応用のためのモデル動物を用いた治療研究による効果の確認である。 これまでに病態に関与するmiRNAを包括的に検索する目的で、マイクロアレイを導入した。まずマイクロアレイにより腎のmiRNAを検討した。対照と比較して疾患マウスであるCPKマウスにおいて増減があるmiRNAを同定した。2倍、4倍、8倍のレベルで増減を区切り、まず8倍の増減があるmiRNAをreal-time PCRで発現を確認し、マイクロアレイの結果を検証した。実際に有意な差を認める分子を同定することができた。 当初の計画では病態の関与が既知のmiRNAの解析を中心に計画したが、包括的検討によりさらなるmiRNAの検索を実施することにより、より効果的な研究をめざす。単なるmiRNA病態関与のみでなく、最終的にはその修飾による疾患治療を念頭に置いているが、そこへの到達は困難も予想され、得られた知見の有効利用の観点から、血液や尿などにおける検討も併せて実施し、バイオマーカーとしての意義も模索することを検討している。 今後の重要な点は、変化が同定されたmiRNAのPKDにおける個々の病態への関与の検証であり、miRNAの生体での修飾が鍵となる。生体での検討が困難な場合、培養細胞等を用いた実験によりまずデータを得ることも重要と考える。最終的目的達成のためには複数のステップにおいて、最良の方法を模索する必要があり困難も予測されるが、根気強く研究を実施し、少しずつでも確実に進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では病態の関与が既知のmiRNAの解析を中心に計画したが、包括的検討によりさらなるmiRNAの検索を実施することにより、より効果的な研究をめざすため、マイクロアレイを導入した。そのため研究費の配分に変更が生じた。 本研究においては、実験に使う試薬が汎用性が高いものの比率が高く、研究室全体の共用の試薬等は教室独自の研究費でまかなう事ができたため、本研究費からの支出を抑制できた。一方、研究推進のための情報収集や意見交換が重要であり、旅費関係が増えた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究推進の方針に大きな変更は無いと考えられるが、本研究の目的を効率良く達成できるように工夫し、研究費を使用していく。本研究に関して、海外の最新の研究成果などの情報収集、海外の関連分野の専門家との直接の議論、本研究の成果発表などを計画しており、海外に出張する必要があり、その費用が発生する。
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