研究課題
多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease、PKD)は、わが国で最も頻度が高い遺伝性疾患であり、慢性腎不全の主要な原因の一つである。常染色体優性(ADPKD)と常染色体劣性(ARPKD)があり、臨床上の差違にもかかわらず共通の基本的病態生理が存在する。本研究の目的は、多発性嚢胞腎の複数の基本的病態生理におけるマイクロRNA(miRNA)の関与とその機序を解明し、それらを修飾することによる病態生理に基づいた疾患特異的治療開発のための基礎的知見の獲得、およびそのヒトへの応用のためのモデル動物を用いた治療研究による効果の確認である。PKDにおける尿細管上皮細胞は、増殖(過形成)・細胞周期異常、分泌(正常では吸収が主である)、細胞外基質異常・線維化を起こし、そのため嚢胞形成・腎不全にいたる。現在、PKDにおけるこれらの基本病態におけるmiRNAの関与およびその機序は不明である。本研究ではmiRNAがPKDの基本病態に関与しているという仮説により、その解明をめざした。これまでに疾患マウスであるCPKマウスにおいて、腎のmiRNAマイクロアレイにより病態に関与すると推定されたmiRNAを同定した。対照と比較してCPKマウスにおいて増減があるmiRNAを選別し、2倍、4倍、8倍のレベルで増減を区切り、まず8倍の増減があるmiRNAをreal-time PCRで発現を確認し、マイクロアレイの結果を検証した。実際に有意な差を認める分子を同定することができた。次にこれらのmiRNAの生物学的意義を確認するとともに、血液、尿などにおける発現も検討し、疾患活動性の評価における有用性を検討し、バイオマーカーとしての意義も模索した。今後は、それらのmiRNAの修飾を念頭に置き、疾患特異的治療開発の基礎的データの収集を目指す。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
腎と透析
巻: 80 ページ: 835-840
腎と透析増刊
巻: 80増刊 ページ: 425-427
別冊BIO Clinica
巻: 5 ページ: 148-151