研究課題/領域番号 |
26461620
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
粟津 緑 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20129315)
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研究分担者 |
飛彈 麻里子 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (20276306)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小児腎臓学 / プログラミング / 母体低栄養 / ネフロン数 / 尿管芽分岐 / DNAメチル化 / DNAメチル化酵素 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
ラットにおいて母体低栄養(NR)はネフロン数を減少させる。私達はNR後腎における尿管芽分岐の抑制、尿管芽分岐を誘導するシグナル分子の変化を見いだし、これらがネフロン数減少に関与する可能性を報告した。さらに胎生18(E18)のNR後腎で全般的および尿管芽分岐を負に制御する遺伝子のDNAメチル化が低下していることを見いだした。DNAメチル化低下はDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)の減少による可能性がある。DNMT1はメチル化の維持、DNMT3A、3Bは新規メチル化を担う。今回、DNMT1、3A、3BのNRおよび対照腎における経時的発現およびDNMT1の腎発生における役割を検討した。 NR(E1から出産まで50%飼料制限)および対照ラット(C0N)のE15、E18、生後0日(P0)、P6、P14の胎仔、新生仔腎におけるDNMT1、3A、3Bの発現をウェスタンブロットで検討した。またE13の正常ラット後腎をDNMT1阻害薬5-aza-2 '-deoxycytidine (Aza) 20 μM存在下、非存在下で3日間培養し尿管芽分岐をwhole mount pancytokeratin染色で、腎サイズを表面積で評価した。 DNMT1はCON、NRともに経時的に発現が減少、P14には消失した。DNMT3Bは少なくともP14まで、DNMT3AはE15 にのみ発現が認められた。E15におけるNRのDNMT1発現はCONに比し著明に減少していた。E15におけるDNMT3Aは両者で差がなく、DNMT3BはNRで増加していた。E18以降にはDNMT1、DNMT3BのNR、CON間の差は認められなかった。Aza存在化で培養された後腎の尿管芽先端数は3.0±0.6と対照(8.2±1.4)に比し有意に減少していた(n=6)。また腎表面積もAza存在下で減少し(1.39±0.10 vs 3.51±1.01、n=6、P<0.005)、NR胎仔腎と類似していた。 DNMT1は正常腎発生過程において発現し、発達とともに減少する。その機能は尿管芽分岐、腎成長促進であり、NR胎仔腎で発現が低下していることから、NRの腎形成異常に関与している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
母体低栄養の胎仔腎DNMT発現への経時的影響を明らかにできた。一方、計画していたゲノム全体のメチル化への経時的検討はまだできていない。しかし当初平成27年度に予定していたDNMT1阻害薬の効果を検討した。また母体低栄養でDNMT1発現が減少したことから葉酸投与によりDNMT1発現および腎発達が改善するかをin vitroでの検討を開始した。しかし母体低栄養胎仔腎は葉酸の有無にかかわらず発育が悪く難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定のゲノム全体のDNAメチル化の経時的検討を行う。また平成27年度行う予定の低栄養母体への葉酸の効果を検討する。さらに母体低栄養胎仔腎の器官培養系を確立し、in vitroにおける葉酸の効果を検討する。さらに網羅的DNAメチル化解析で母体低栄養により変化した遺伝子のDNAメチル化をパイロシークエンシングにより確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文掲載料、別刷の請求が来ることを予定し研究費を残していたが年度内に請求が来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に論文掲載料の請求が来るのでその支払いに当てる。また別刷購入を中止しその分の助成金を消耗費に当てる。
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