研究課題
申請者はラット後腎において母体低栄養が尿管芽分岐抑制、ネフロン数減少、全般的DNAメチル化低下を来すことを見いだした。また前年度までの研究でDNAメチル化を維持するDNAメチル化酵素DNMT1の発現が母体低栄養ラット後腎で低下していることを明かにした。今年度はまず正常後腎発生および母体低栄養後腎発生異常におけるDNAメチル化の役割を 1) 器官培養系におけるDNMT1の阻害効果、2)メチル基ドナーである葉酸の母体低栄養ラットへの補給効果をみることにより検討した。DNMT1阻害薬存在下で培養された後腎の尿管芽先端数、腎サイズは対照に比し有意に減少した。一方、低栄養母体への葉酸補給は尿管芽先端数、糸球体密度、DNAメチル化を増加させた。また葉酸欠乏培地で培養した後腎の尿管芽先端数、腎表面積は対照に比し有意に減少していた。以上よりDNAメチル化は腎発生に必要であり、その低下は母体低栄養後腎の尿管芽分岐、ネフロン形成減少の一因であることが示された。また申請者はMeDIPにより母体低栄養によりDNAメチル化が変化する遺伝子を網羅的に解析し、尿管芽に関与する遺伝子が多数変化していることを見いだしている。今回、DNAメチル化が変化していた遺伝子のうちその程度が大きくかつ腎発生上重要である遺伝子につき遺伝子特異的メチル化を検討した。しかしパイロシークエンス(ベ-タカテニン、PI3Kガンマサブユニット、Axin2)、バイサルファイトシークエンス(ベータカテニン)ではメチル化の変化を検出できなかった。MeDIPでは対照と母体低栄養で差を検出できていることからDNAヒドロキシメチル化が変化している可能性が考えられた。現在母体低栄養と対照とのヒドロキシメチル化の差を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
予定している研究項目のうち3項目が終了している。遺伝子特異的メチル化についてはパイロシークエンス、バイサルファイトシークエンスでは母体低栄養によるDNAメチル化の変化を検出できていない。検討した遺伝子の中でベータカテニンは腎発生上重要な遺伝子であり、MeDIPで差があることから当初予定していなかったDNAヒドロキシメチル化を現在検討中である。
当初の予定どおり母体低栄養胎仔腎への葉酸の効果をex vivoで、DNMT1阻害薬の効果をin vivoで検討する。また母体低栄養により特異的ヒドロキシメチル化が変化する遺伝子、特に腎発生、尿管芽分岐に関与する遺伝子を探索する。全般的DNAメチル化の経時的変化を検討する。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
次年度分と合わせて使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 3件)
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