研究実績の概要 |
小児PAH(65例)を対象に、BMPR2、ALK1、SMAD遺伝子の異常の有無を直接シークエンス法及びMLPA法で解析した。直接シークエンス法で検出できていなかったBMPR2の遺伝子変異が2家系で確認できた。SMAD8については以前に1例報告済みであったが、その後症例を増やして検討しても新たな変異は発見できなかった。また、smad1,2,3,4,5についても変異はみられなかった。 我々が検出したSMAD8のナンセンス変異は、その機能解析によりTGF-β/BMPシグナル伝達において機能低下型の異常を引き起こすことを明らかになっている。さらにその後、米国の研究グループがSmad8ノックアウトマウスではPAHの特徴的病変を持つ肺血管の異常が生じることを報告したことにより、SMAD8遺伝子がBMPR2、ALK遺伝子に次ぐ3番目のPAHの疾患遺伝子あることが強く支持された。しかし、その頻度はBMPR2やALK1と比較すると非常に低いものと考えられた。 しかし、これらの事実は、BMPR2、ALK遺伝子異常を認めない小児PAHの少数例ではBMP/ TGF-βシグナル伝達に関与する他の遺伝子の異常が関与していることを強く示唆している。すなわち、既知の疾患遺伝子の異常が認められていないPAH症例で未だ探索、同定していない遺伝子の異常が小児PAHの発症に関与している可能性が高いと考えるのが妥当である。 そこで、BMP/TGF-βシグナル伝達の中で、いまだ未検討のHIVEP1について変異を検討すべくそのプライマーを作成し、直接シークエンス法で解析を開始した。
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