平成26年度で取得した臨床データの増補を行い、最終的に同意の得られた小児17症例の心臓カテーテル検査から臨床データを取得した。肺動脈内に圧‐流速同時測定ワイヤーを挿入し、測定データをオフラインで位相角θ(閉塞なし=0°~完全閉塞=-90°)を算出した。対照群(1例):-1°、軽度肺高血圧(PH)群(5例):-38.2±13.1°、中等度~高度PH群(11例):-57.0±14.0°であった。同時に算出した従来の指標である肺小血管抵抗とr=0.48と緩やかな相関を認めた。これらより本方法がPHにおける肺血管閉塞度を予測する指標と成り得る結果が得られた。 実地臨床を鑑み、位相角θを非侵襲的に測定する方法の開発が必要と判断され、データ採取法を心臓超音波検査へ置き換えることの可能性についてコンセプト検証を行った。心臓超音波検査では血流速の測定は可能であるが、圧力測定は不可能である。この課題に対し“圧力変動を血管直径の変動に置換”する理論を元に“圧力波形=血管径変化波形”を実際に血管と同じヤング率を有する弾性チューブに拍動循環を与えた循環回路モデルで測定した。圧‐流速同時測定ワイヤーで同時測定して算出した従来の位相角と心臓超音波検査データから測定した位相角はほぼ同じ値となり、この置き換えは成功と判断した。この結果を基に、臨床データ収集のための最適な画像取得のための条件とデータ処理方法の検討について、心臓超音波検査器機を製造販売する国内メーカーと協働を開始した。
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