研究実績の概要 |
胎生期のどのような子宮内環境が胎児早産児の副腎機能の発達を促進もしくは抑制するのか,その病態生理の解析はまだ端緒についたばかりである.子宮内炎症が早産児の副腎機能を抑制する可能性が報告されているが,その具体的な抑制機構は明らかにされていない.そこで,本研究では成育限界の早産児における副腎機能の発達過程と出生への適応過程を明らかにするため,妊娠91-97日 (ヒトの妊娠24-26週) のヒツジ胎仔に炎症性もしくは虚血性ストレスのみならず,人工胎盤システムに接続する胎盤切離ストレスを負荷し,これが胎仔のcortisol分泌能とその循環動態に与える影響を明らかにすることを目的にした.本研究は成育限界で出生する早産児の内分泌学的な適応もしくは適応不全についての基礎研究であるが,こうした成果を踏まえることによって,出生前の子宮内環境に応じた出生後のグルココルチコイド補充療法を,その病態生理に基づいて具体的に提案できる. 平成28年度には妊娠95日のヒツジを用いて12回の実験を計画したが,2回は受胎が得られなかった.また2回は手技上の問題で実験を完遂できず,合計8回 (炎症群6例とsham群2例) の実験からデータが得られた.胎生期ストレス負荷前後と人工胎盤装着中にCRH負荷試験を実施できた胎仔は4例,胎生期ストレス前後のみCRH負荷試験を実施できた胎仔は4例で,のべ22回のCRH負荷試験を実施できた.冷凍保存した血漿から100検体を選んで,ACTH, cortisol, cortisone, DHEA-S濃度を液体クロマトグラフ質量分析計にて測定した.胎仔副腎の組織切片標本は8例全てから得られたため,前年度の切片標本と合わせて,胎仔の副腎皮質を抗3β-hydroxysteroid dehydrogenase抗体で免疫染色し,副腎皮質移行層の成長を今後評価する予定である.
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