研究実績の概要 |
本研究は、妊娠中の抗てんかん薬服用に起因する胎児の発達障害を予防するための知見を得ることを目的としている。平成26年度は、埋め込み式infusion pumpを用いたバルプロ酸(VPA)投与法でてんかん治療域レベル(50~100μg/ml)の血中濃度を保つための投与条件の検討、および胎生期VPA曝露に起因した脊髄神経形成異常について、投与量や投与時期による発生率の変動を検討した。 非妊娠SDラットの背部皮下に小型infusion pump(iPRECIO, プライムテック)を留置し、種々の濃度や流速でVPA投与を行い、血中VPA濃度を測定した。その結果、濃度500 mg/ml, 流速20μl/hの投与は、投与後1~24hの血中VPA濃度が63.3~88.0μg/mlとなり、安定的に治療域VPA濃度を保つために適当であると考えられた。 また、VAP投与時期による脊髄神経形成異常の出現頻度等の変化を検討するため、ICRマウスのGD 6, 7, 8, 又は9にVPA (400 mg/kg)を皮下投与した。GD10で胎仔を採取し、抗neurofilament抗体を用いたwhole-mount免疫染色を行い脊髄神経の走行を観察した。VPA曝露胎仔では、神経束の消失、隣接する分節との合流や分節の二分化などの分節性走行の乱れが認められた。これらの脊髄神経形成異常の発生頻度はGD8に投与した群で最も高かった(36.8%)。次に、VAP投与量による脊髄神経形成異常の出現頻度等の変化を検討するため、前述の検討で脊髄神経異常の頻度が最も高かったGD8に、200, 400, 又は700 mg/kgのVPAを皮下投与し、同様に胚仔の脊髄神経を観察した。その結果、脊髄神経束の消失や隣接する分節への合流などの主要な脊髄神経形成異常は、VAP投与量に依存して発生頻度が変化した。分節の二分化など比較的発生頻度が低い形成異常は投与量の影響を受けなかった。以上より、胎生期VPA曝露による脊髄神経形成異常の発生頻度は、VPAの曝露時期や曝露量の影響を受けることが明らかとなった。
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