研究課題/領域番号 |
26461636
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
三木 崇範 香川大学, 医学部, 教授 (30274294)
|
研究分担者 |
太田 健一 香川大学, 医学部, 助教 (50403720)
鈴木 辰吾 香川大学, 医学部, 助教 (50451430)
割田 克彦 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40452669)
横山 俊史 神戸大学, 農学研究科, 助教 (10380156)
日下 隆 香川大学, 医学部, 教授 (50274288)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 母仔分離 / 視床下部 / BDNF / TrkB / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
今年度はSDラットを用いて脳発達期母仔分離ストレス曝露モデルの体重変化と食摂量について通詳細な検討を行った。
母仔分離群では離乳時(21日齢)で既に体重がコントロール群より低いため、その後の生後60日齢でもコントロール群より体重は低いままであった。しかし、生後25日の体重を基準とした「体重増加率」に換算すると母仔分離群では生後45日以降の体重の増加率が有意に高かった。更に体重の増加割合は、生後35日と45日では母仔分離群ではコントロール群と比して有意に高いことが分かった。また同様の時期では摂餌量(体重にて補正)が有意に高いことも明らかになった。これらの結果は母子分離曝露された仔では、離乳後の比較的早い成長期の摂食量が多くそれに伴って体重の増加率が高くなっていることを示唆するものである。これら若年期における摂食量及び体重増加率の増加の結果から、昨年度の発達期に母仔分離の影響を受けていた脳由来神経栄養因子(BDNF)に再度着目した。BDNFは摂食抑制やエネルギー代謝の促進作用を持つことが報告されているため、特に摂食やエネルギー代謝との関与が深い視床下部を中心に様々な脳部位を60日齢で採取しBDNF発現をウェスタンブロットにて解析した。どの部位においてもBDNFの発現に変化は見られなかったが、興味深いことにBDNFの受容体TrkBの発現量は母仔分離された群で高い傾向にあり、特に視床下部では有意に増加していた。培養細胞等による実験からBDNF刺激はTrkB発現を減少させることが報告されており、今回のTrkBの発現量も単純に増加したのではなくむしろBDNFが十分に機能していない(放出されていない)事を反映していると考え、視床下部の領域別の解析も視野に入れ更に検討を進めていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね順調に進捗している。しかし、上記研究実績の概要に記したように、体重と摂餌量の基本的データーをもとに脳、特に視床下部の解析に移行したため、当初予定していた網羅的解析(次世代シーケンサー解析)を延期したが、次年度は滞りなく実施できる体制にある。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度の結果を踏まえて、母仔分離動物における視床下部のBDNF-TrkB機構と摂食量増加について更なる解析を行っていく予定である。特にBDNFについては単純な発現量だけでなく、制御因子や下流シグナルも含めて解析して行くことでより機能に迫った評価を行う。また視床下部のBDNF-TrkBシグナルはストレスホルモンの発現にも関与しており、これがエネルギー代謝や摂食量に影響する事からこれらの点についての解析にも注目していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
母子分離と摂食やエネルギー代謝の関係についてはまだ不明な点が多いことから、視床下部における網羅的な遺伝子発現を次世代シークエンスにて行う予定だった。しかしながら視床下部のBDNF-TrkB系に絞った着目をすると、有意な変化が認められたためまずこの点について詳細な解析を進めていくようにした。そのため次世代シークエンス解析についてより情報が得られた後に必要性があれば次年度に測定するように計画を変更したため次年度使用額が生じている。
|
次年度使用額の使用計画 |
これまでの結果から得られた解析より、追加での実験が必要となりそのための動物及び抗体購入に使用する予定である。また必要性があれば次世代シークエンスを行う事も予定しているためその費用としても使用することを計画している。
|