研究課題
遺伝子組換えトロンボモジュリン(rTM)の脳保護効果を、中大脳動脈閉塞(MACO)ラットモデルを用いて研究した。MACO後30分にrTMを単回投与し、6時間後に梗塞部位をTTC染色で評価した。梗塞部位は対照群(生理食塩水)と比較して有意に縮小していた(既報告)。さらに、MACO後30分にrTMを単回投与し、24時間後に神経筋機能と梗塞部位を評価した。rTM投与群は対照群と比較し梗塞部位は縮小していたが、24時間後ではrTM投与群と対照群との間で有意な差はなかった。しかし、脳容積はrTM投与群で対照群と比較し有意に減少し、神経筋機能評価も有意に改善していた。MACOは脳梗塞部位で不可逆的な進行が予測される。rTM投与群で脳容積の減少と神経筋機能の改善が得られたことから脳傷害の進行の抑制効果を有すると考えられる。そこで、rTMの追加投与を検討した。MACO後30分と6時間の2回投与を行った。しかし、rTMの単回投与で見られた有意な改善効果はなかった。脳病理および予後から、水分負荷の影響も考慮された。rTMの作用機序を明らかにするために免疫染色法を用い病理検検査と血中HMGB-1、TNFα、IL-1β、IL-6の測定を行った。脳病理検査はTUNEL染色、GRAF染色に加え、TNFα、IL-1βを免疫染色した。梗塞部位はTUNEL染色が陽性で、GRAF染色は対側に比して増強し、TNFαおよびIL-1βは陰性対照と比較し陽性を示した。また、血中HMGB-1は、MACO後は高値であったが24時間後には低下していた。血中TNFα、IL-1β、IL-6についても検討したが、MACO後24時間ではrTM投与群と対照群との間に差異はなかった。脳病理検査から病態にアポトーシスに加え炎症の関与が示唆された。
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日本本産婦人科・新生児血液学会誌
巻: 26 ページ: 53-59
0916-8796