研究課題/領域番号 |
26461641
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
河野 由美 自治医科大学, 医学部, 教授 (50243390)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低出生体重児 / ストレス反応 / 発達障害 / グルココルチコイド |
研究実績の概要 |
低出生体重児は、一般児にくらべ自閉症スペクトラム障害(ASD)など、行動や感情の発達障害の合併が多いことが報告されているがその理由は不明である。NICUに入院した低出生体重児のストレス反応とグルココルチコイドレセプター(GR)遺伝子(NR3C1)のDNAメチル化率の関係を検討し、低出生体重児における発達障害の発症にエピジェネティクスによるGR遺伝子のDNAメチル化変化が関与することを明らかにすることを本研究の目的とした。平成26年度には、研究の実施計画を倫理委員会に申請し研究の承認を得た。研究対象は、在胎30週未満または出生体重1000g未満の児とし、NICU入院時に保護者に説明を行い同意を取得した。同意の得られた7名の臍帯血から、DNA抽出キット(Flexigene DNA Blood Kit)を用いてゲノムDNAを抽出し保存中である。0.5~1.5mlの臍帯血全血から15~75μgのDNAが回収でき、メチル化解析に十分な量であることを確認した。NR3C1の解析領域の遺伝子情報からプライマー配列を決定しプライマー設計を行い、メチル化解析の準備を整えた。対象の、妊娠中の経過、母体へのステロイドを含めた投与薬物、在胎期間、出生体重、NICU入院期間中にみられる合併症、治療についての情報を経時的に取得し、データベースを作成した。平成26年度の目標症例数は10名であったが、7名しか同意・検体取得ができなかったため、対象を32週未満または出生体重1500g未満に拡大する予定とし、倫理委員会への変更申請を行う。また、唾液中のコルチゾール・アミラーゼの測定法を確立したが、NICU入院中児での測定ができなかったため、平成27年度には唾液の採取とコルチゾール、アミラーゼの測定を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象とした「在胎30週未満または出生体重1000g未満の児」の同意取得症例数が、目標症例数に到達しなかった。倫理委員会審査への提出が遅れ、研究開始がやや遅れたこと、当初の予想より該当する早産・超低出生体重児の出生数が少なかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象数を増やすため、対象を「在胎30週未満または出生体重1000g未満の児」から「在胎32週未満または出生体重1500g未満の児」に拡大することとし、倫理委員会に変更を申請する。現在の対象相当の症例については、引き続き同意取得、臍帯血からのDNA抽出・保存を継続し、退院後の採血時にも血液を採取しDNAを抽出・保存を行う。対象拡大後の症例については、倫理委員会の変更許可後に同意取得と臍帯血採取を行う。解析対象サンプルが40検体以上収集できた時点で、パイロシークエンス法によるNR3C1メチル化解析を行う。NICU入院中に児から唾液を採取し、唾液中のコルチゾール、アミラーゼの測定をELISA法および簡易アミラーゼ測定器で測定し、その相関を検討する。引き続き対象の、妊娠中の経過、母体へのステロイドを含めた投与薬物、在胎期間、出生体重、NICU入院期間中にみられる合併症、治療についての情報を経時的に取得し、データベースへの登録を行う。DNA メチル化解析結果の集積後に、1)臍帯血およびNICU 退院後血液のGR 遺伝子(NR3C1)CpG 各サイトのDNA メチル化率、2)NICU 退院後血液のNR3C1 遺伝子CpG 各サイトのDNA メチル化率とNICU 入院中の各日齢の唾液コルチゾールとの関係、3)出生体重、NICU 入院中の合併症や治療などのライフイベントとストレスバイオマーカー、NR3C1遺伝子CpG 各サイトのDNA メチル化率の関係について統計学的手法を用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
血液試料採取の開始が遅れ、当初予定した症例数の検体数が収集できなかった。効率よく確実に解析するためには、40検体以上が収集できた時点で、同時にDNAメチル化解析を行うことが望ましいことが判明したため、解析に必要な消耗品物品費等の購入を次年度に繰り越しすることとした。それに伴い、人件費、旅費の支払いも不要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には対象の範囲を拡大し、検体数を増やすことが見込まれる。40検体以上収集できた時点で、DNAメチル化解析を行う予定である。このため消耗品物品(解析用の試薬やディスポーザブル実験用具など)の使用額の増加が予想される。
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