研究課題
まず使用する3種のプロバイオティクスであるLactobacillus reuteri、Lactobacillus brevis、Bifidobacterium breveの菌数の調整を行った。L.reuteri、L.brevis(KB290)、B.breve(M-16V)をそれぞれの状態から統一液体保存菌株を作製し、-80℃で冷凍保存した。次にL.reuteriおよびL.brevisは好気的に、B.breveは嫌気的にMRS培地に培養条件を確認後増殖培養を行った。今後これらの3種のプロバイオティクスを使用し、細胞培養実験ならびに動物実験を行っていく。プロバイオティクスの消化管粘膜における免疫応答を検討するにあたり、マウスの消化管免疫応答の発達過程を知ることを目的に、母乳飼育群と人工飼育群に分け、生後早期の消化管粘膜における免疫細胞の変化を観察した。母乳飼育群(n=5)と人工飼育群(n=7)間で体重や胸腺重量に差を認めず、人工飼育群では、CD45+免疫細胞、γσT細胞、NK T細胞、樹状細胞、マクロファージ、CD8+T細胞、CD4+T細胞などが母乳飼育群に比して増加していた。この結果より、人工乳飼育では、消化管粘膜の自然免疫応答はより活性化されており、T細胞の分化にもより強く影響を及ぼしている可能性が示唆された。低出生体重児へのプロバイオティクス投与の有用性につき検討するにあたり、生後早期のB.breve投与のその後の腸内細菌叢への影響を調査した。日齢0からのB.breve(M-16V)投与により、9例中5例の極低出生体重児でNICU退院一年後もM-16Vの排泄を認め、投与したプロバイオティクスの定着が確認された。本結果はこれまでに報告のない新しい知見と考えられた。
3: やや遅れている
3種類のプロバイオティクスを企業から入手するのに時間がかかったため、L.reuteri、L.brevis、およびB.breveを実験に使用するために培養および調整することが遅れた。そのために、続いて行う予定であった細胞培養ならびに動物実験が開始できなかったため当初の計画より進行が遅れることとなった。他方、その間当初の計画にはなかったが、本研究の遂行には重要と考えられるマウスの人工飼育実験が行えたことは意義のあることと思われた。
L.reuteri、L.brevis、およびB.breveの調整が終了したので、今後予定通り、Caco-2細胞を用いたプロバイオティクスの付着能の検討および新生仔マウスにおけるプロバイオティクスの定着能の検討を行っていく。さらに人工飼育にて消化管粘膜の免疫応答について検討を行った新生仔マウスにおいて、プロバイオティクスの消化管免疫応答への影響を検討していく。また極低出生体重児に対するプロバイオティクスの消化管免疫応答について、M-16Vの定着を認めているNICU退院後1年以上経過した群についても併せて検討を行っていく。
プロバイオティクスの入手および調整に時間を要したため、Caco-2細胞ならびに新生仔マウスを用いた実験を開始することができず、したがって消耗品費の支出が予定を下回り、次年度使用変更が生じた。
次年度は本年度行えなかった実験を行うため、本年度分の消耗品費を使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
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