研究実績の概要 |
研究計画に基づいて,平成28年度では福岡大学病院周産期母子医療センターで発症あるいは連携施設で発症し移送されたAP-ROPおよび関連状態のROP症例のうち倫理委員会承認用件に基づきinformed consentを行って同意が得られた対象症例についてのデータ集計と解析を行った。 平成26年度から28年度にかけてルセンティス硝子体投与(IVR)を18例36眼に行った。同時期にアバスチン投与(IVB)を17例34眼に行った。在胎週数,出生時体重,治療時期,治療時体重に両群で差はなかった。治療対象はIVR群のうちAP-ROPが6眼、Zone I ROPが13眼、Zone II ROPが5眼であったのに対して、IVB群ではそれぞれ、10眼、3眼、15眼で、その割合に有意さは見られなかった。 治療後両群とも全例でROPは沈静化したが,ほぼ全例で再燃がみられた。境界線の再燃時期は,IVB群は治療後9.0±3.0週,IVR群では6.0±1.2週(p<0.01)、 IVR群がIVB群に比較して優位に再燃時期が早かった。再燃後の追加治療は,IVB群6例11眼(32%)IVR群8例16眼(44%)(p=0.29)と差はなかった。追加治療時期は,初回治療後IVB群10.2±3.6週,IVR群8.2±1.8週(p=0.12)と差はなかった。両群とも最終的に網膜剥離に至った例はなく、各々2眼(IVB5.9%,IVR5.6%)に牽引乳頭,黄斑偏位を認めた。それ以外に眼合併症はみられなかった。慢性肺疾患,脳性麻痺はIVB群各々5例,3例でIVR群4例,2例と差はなかった。 ROPをIVRで治療するとIVBと比較して治療後に再燃がみられる時期が早かったが、追加治療の必要度や最終成績、有害事象発生率に有意差は無く、IVRはIVB同様に有効な治療法であるといえる。
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